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医療・健康問題の意思決定における限定合理性について

※地域医療ジャーナル2018年12月号 vol.4(12)より転載です。情報の鮮度にご注意ください。

 意思決定をする際に僕たちが参照している情報は、合理的に判断するために必要な全ての情報ではありません。

 例えば、“ある健康食品が体に良い”というテレビ番組を見て、その健康食品を買い求めようという意思決定を想像してみてください。その意思決定において参照されている情報は、テレビ番組の内容がほとんどであり、健康食品に関する様々な情報を集め、その有効性や安全性について、徹底的に吟味した結果ではありません。

 このように、問題解決の際、簡略化されたプロセスを経て結論に至ることをヒューリスティックスと呼びます。ヒューリスティックスは迅速な意思決定を可能にさせる反面、判断から合理性を奪います。

 ヒューリスティックスに代表されるように、人間の意思決定は、常に合理的な価値観のみでなされるわけではありません。「人間が合理的であろうとしているにも関わらず、その合理性には限界がある」という考え方を限定合理性(Bounded Rationality)と呼びます。医療・健康問題を巡る意思決定においても常に限定合理性が関わってきます。それは患者のみならず、医療者もまたその影響下にあると考えた方が良いでしょう。

意思決定における時間選好

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