セフカペンピボキシルが「だいたいウンコ」って本当ですか?

 第3世代の経口セフェム系抗菌薬はバイオアベイラビリティー(生物学的利用率)が低いことを理由に、「だいたいウンコ」になる薬などと否定的に語られることの多い抗菌薬です。一方で、バイオアベイラビリティーが低い薬など、この世にたくさんありますし(例えばビスホスホネート製剤など)、そもそもバイオアベイラビリティーが薬の効果を規定する強い原因なのかと問えば、必ずしも明確な答えがあらかじめ用意されているわけではありません。バイオアベイラビリティ―が低いのであれば、その投与量を増やせばよいわけで、効果を得るのに必要な用量設定は探索的臨床試験の結果に基づいているはずだからです。

 むろん、経口3世代セフェムが不適切に用いられている現状を否定するつもりはありません。とはいえ、「そもそもウンコ」みたいな薬が世の中に多数存在する以上、「だいたいウンコ」だけを批判するというのも、価値観が偏っているよう感じてしまいます。この記事では「だいたいウンコ」となる抗菌薬の中でも日常的に取り扱う機会が多いセフカペンピボキシルについて、服薬説明に役立つエビデンスを紹介したいと思います。

セフカペンピボキシル、本当に「だいたいいウンコ」なの?

 セフカペンピボキシルのバイオアベイラビリティーはどれくらいなのでしょう。インタビューフォームには明確な記載はありませんが、「韓国臨床薬理学会誌」に掲載された論文【1】によると、尿中に排泄された未変化薬剤の割合は31.5%〜42.9%と、「だいたいウンコ」というよりは、「おおむねウンコだけど、おしっこも多い」ことが分かります。また、単回投与でも十分な血中濃度が得られていることから、同薬が決して「だいたいウンコ」ではないことは明らかだと思います。

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