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2020〜2022年日記 抜粋(無料)

2020年
11/15
オフィスチェア探しのため、大塚家具のオフィスチェアコーナーの椅子に、片っ端から座る。
オフィスチェアに敏感になり、その後バス停に置いてあるOkamuraの椅子を発見し、野良okamuraだ! と思った。

11/30
昔好きだったインディーズバンドをふと思い出し、メジャーに移籍した最近の曲を聴いたら全然路線が違った。
インディーズの頃の方が良かったとか言うやつは古参アピールしたいだけ、みたいな風潮が強いせいで、本当にインディーズの頃の方が良かったと思っても言いづらくなった。
メジャーデビュー以降商業路線になってつまらなくなったアーティストの曲を聴くと本気で泣いてしまう。いろんな事情があって、生活があって、それを選んだ・選ばざるを得なかったであろうことの重みで。それでもなお、私には想像の及ばないような背景もあるのだろう。

2021年
1/22

都電沿いの古本屋に入ってみると、1mくらいの高さまで本が平積みされていて満遍なく砂埃が被っている。品揃えは漫画とエロ本、小説がほとんどで、ノストラダムスもある。テレビを見ていた店主が「爆笑問題の田中、脳梗塞だって」と突然話しかけてくる。
「あ、そうみたいですね」
「何があるかわからないもんだねえ、人間」
「あ、そうですね」
多分私の声は聞こえていなかった。文庫本を2冊購入。砂埃のせいで一見汚いが、払えば取れるし意外と状態は良い。
店主は指をぺろっと舐めてレジ袋を開け、その中に本を入れた。全てが汚いのかこの店は。

7/8
田園都市線の初めて降りる駅の駅前で、洋菓子店に喫茶コーナーが付いているタイプの店を見つけ、入って「喫茶を利用したいんですけど」申し出ると「喫茶やります?」と聞かれた。喫茶、やります。
ケーキとコーヒーまたは紅茶で500円。「タヌキ」という謎のタヌキを模したケーキがあった。
隣のテーブルでは町内会らしき集団が会議をしている。大瀧詠一のA LONG VACATIONが流れている。外は雨が降っている。完璧だ。
「タヌキ一つ」と当たり前のようにタヌキを買っていった人を見た。

8/27
高崎での取材のため、珍しく早朝に家を出る。なんでこんな朝早く出かけないといけないんだ、と思ったけどよく考えたら、ほとんどの学生や勤め人はこのくらいの時間に毎日出てるんだよな、と思う。私だって睡眠障害になる前はそんな感じだったわけだし、なんならもっと早く起きて高校行ってたし。

ランドセルを背負った小2くらいの男児がウォッシングマシーンTとすれ違い、思わず二度見する。早起きするとこんな良いこともあるもんだ。

湘南新宿ラインでジルスチュアートのバッグを持った普通の若い女性が麻雀の動画を見ていて、思わず二度見する。

9/22
取材先の飲食店にて、親が子供に対して「顔アップされちゃうよ」と諭していて、SNS時代の脅しだ、と感心する。

9/13
下北沢にある、昭和レトロ系の古着屋にて、店員に「服めっちゃ可愛いですね。昭和レトロって感じ」と言われる。確かにその通りなのだが、昭和レトロな古着を着て昭和レトロな古着屋に入って昭和レトロな店員に昭和レトロと言われると、なんか恥ずかしい。

豹柄のフェイクファーコートを試着。探し続けて4年くらいだろうか、手頃な価格でしっくり来るものがありそうでない。かつて探し続けていたチェック柄のスカートも3年半かけてようやく出会ったので、いつか出会えると信じて見送る。

古着屋にいる若者がだいたい私より若くて老いを感じる。25歳くらいから感じるようになった現象だ。私と同世代で古着を着る層は、もう少し高い古着屋に行っているからだろうと思うと、つらい。

喫茶店にて、ホットティーを頼む。
「レモンはありかなしかどっちが良いですか?」
「えっと、ミルクありますか?」
「普段はやってないんですけどできます」
「じゃあお願いします」
普段はやってないのになぜ今できるのかはよく分からない。美味しかった。

2022年
2/2

谷中のビスケットという雑貨屋で、ボタンのダサさが玉に瑕なシャツにつけるためのボタンを買った。フランス製、1個100円。

その近くにある、映画『転々』に出てきたお店「愛玉子」を見に行った。
日曜日の最終バスは絶妙に寂しい、というセリフがあるのだが、その感覚がわかる気がした。この辺は地理的な要因なのか何なのか、夕方になると妙に寂しい気分になって逃げるように帰りたくなる。
そのあと散策して通りかかったカヤバ珈琲がかなり良い感じで、今度行ってみたいと思った。その向かいに下町資料館があって、行きたいと思った。最近、いつまで東京にいられるかわからないから東京でやり残したことがないように行動することを意識しているのだが、結局、東京でやり残したことをしていると新たなやりたいことが見つかってしまう。
どこまでも欲望を駆り立てる街だ、東京は。

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