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日記 8月下旬 自分の人生より他人の人生を生きたい人もいる

22日 向田邦子の墓参り

向田邦子の命日。墓のある多磨霊園には去年も行ったので、行く意味あるのかな?別にゆかりの土地とかでもないし……などと思いつつも、こんなにも意味のないことに私を走らせてくれるのは向田邦子だけなので、行くことにした。

去年の命日↓

真夏のピークが去った(フジファブリック)上に曇っていたのでそれほど暑くなかった。多磨霊園に着いて、去年蚊に刺されまくった反省を踏まえて昨日こしらえておいたハッカ油スプレーを足に吹きかけながら、向田邦子の墓へ。
墓の並びの法則がわかりづらくて去年は散々迷ったのだが、今年はスムーズに辿り着けた。去年遭遇した向田邦子研究会とも今年は遭遇せず。
新しい花がお供えされている。目を閉じて合掌すると、虫が這うみたいに汗が背中と首を伝っているのを感じる。蝉と鳥の鳴き声が聞こえる。
しかしもう新鮮味が薄れてしまったので大した感慨はない。


そのあと去年友達に教えてもらった多磨霊園近くのレストラン「ホーマー」へ。いかにも昭和のレストランといった感じ。

せっかくなので向田邦子のエッセイを読む。「メロン」というエッセイの、

メロンは、病室で、パジャマ姿で食べても少しもおいしくないのである。高い値段を気にしながら、六分の一ほどを、劣等感と虚栄心と闘いながら食べるところに、この果物の本当の味があるらしい。

『無名仮名人名簿』文春文庫、p.225~226

という一節に感銘を受ける。それまで値段を気にしながら劣等感と虚栄心と闘いながらメロンを食べたことしかなかった向田邦子が、入院した際にお見舞いでメロンをたくさんもらい、初めてメロンを何も気にせず思う存分食べられる状況になった、という内容である。
私はシティガール未満の国立の回にも書いたが、美味しい食べ物を値段を気にしながら劣等感と虚栄心と闘いながら食べるとその美味しさを味わいきれないものだとばかり思っていた。もしこの「メロン」を読んでからスペシャルショートケーキを食べていたら、これもまた一興だと思えたかもしれない。

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