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Yell note :Page33 絆のアリル ファーストシーズン感想まとめ①

2023年4月~6月に渡りアニメ「絆のアリル」ファーストシーズン全12話が放送されました。

昨年アニメ情報が解禁された際は「キズナアイにまつわる物語」ということで注目を浴びた本作。セカンドシーズンへの展望も含め私なりの評価を書いていこうと思います。
なお、できるだけ公平な評価を行うため、アニメ本編はもちろん製作関係者のインタビューなどもできるだけ目を通しています。

メガミマガジン2023年6月号
『絆のアリル』特集

※記事中のアニメ本編画像は絆のアリル公式サイト(©KA/絆のアリルPJ ©絆のアリル製作委員会)より引用しています。

1.脚本について

①良かった点

まず真っ先に思いつく評価点としては「絆のアリル」ひいては「アリルズプロジェクト」の中心人物であるミラクを様々な角度から描写していたことでしょう。

彼女とキズナアイの関係についてはセカンドシーズンに持ち越された感はありますが、ミラクがバーチャルアーティストに抱いている憧れであったりPathTLiVeのメンバーへの友情だったり、ミラクがどういうキャラクターであったかは十分に伝わってきました。ワン〇ースのルフィほどではないにせよ勢いで突っ走っていくタイプですね。だからこそ思慮深いメンバーたちの性格も際立っていますけど。

また、それに付随してPathTLiveが結成に至るまでの描写がキチンとされていたこともよかったです。特にノエルやクオンのエピソードは彼女たちの葛藤がどのように解決されるかというのも見どころでした。劇中で何度も「繋がりたい」という言葉が出てくるように、ミラクとPathTLiveのメンバーがどのように絆を深めていくかという物語でもあったと思います。

ADENシードの予選は個人戦なのでユニットを組む必然性はなかったのですが、「誰かと繋がることで生まれる可能性」について言及したことでソロ活動だったキズナアイと差別化を図れたのはよかったのではないかと。

一方で登場が遅かったリズについてはさすがに描写不足でしたね。それについては後述。

序盤からライバルキャラとして出てほしかった

②悪かった点

これはファーストシーズン単体で評価してのマイナス点なのですが、まずは「展開が遅すぎる」こと。
12話全てを予選期間に費やしてしまったことで「ミラクたちは予選突破できるか?」という山場は事実上最終話のみのイベントになってしまい、そこに至るまでは限られた登場人物による会話劇になってしまっていました。リズの登場の遅さもその傾向に拍車をかけていたと思います。あれだけパーソナリティの強いキャラなら序盤からトリックスター的に立ち回ることもできたはずなのに。

現在のアニメ視聴者の間では「1話切り」や「3話切り」など序盤に盛り上がりがなければ容赦なく視聴をやめる人も多いわけで、その視聴スタイルの良し悪しは別にして最後まで見てくれる視聴者をだいぶ減らしてしまったのではないでしょうか…。Cパートとしておまけを入れていたのでなおさら本編が進んでいないように感じてしまうという。

例えばラブ〇ライブのように大会出場のためにメンバーを集めなけらばならない、といったハードルが存在するなら「ノエルは仲間になってくれるだろうか?」みたいに先の展開を気にするのですけどね…。そしてあれだけ明るい性格のミラクが「友達がほとんどいない」という設定なのも無理があるかなと。

バーチャル世界の人間関係って特殊そうではありますが

そして私の悪い予感が的中してしまった「PathTLive以外のアリルズメンバーが出てこない」問題。前述した展開の遅さと双璧を成すマイナスポイントで、これにより相当数のファンが脱落したのではないかと懸念しています。
というのも、アニメ放送前の宣伝で「15人が登場する」ことを大々的に謳っていてキャラの声優さんごとに多くのファンが期待していたはずです。
しかし蓋を開けてみれば最終話にBRT5がチラ見せされただけで全く出てこないとなれば、声優さん目当てのライト層が離れてしまっても仕方のないことでしょう。(実際私も知人から「〇〇さんのキャラっていつ出てくんの?」と聞かれましたし…)

セカンドシーズンが本番だから、というエクスキューズがあるにせよファーストシーズンの段階でミラクたちと絡ませる方法はいくらでもあったはず。仮にセカンドシーズンが15人でのお祭り状態になったとしてもファーストシーズンの評価が上がるわけではありません。
おそらくミラクとPathTLiveを中心に描くためのトレードオフだったと推測しますが、視聴者からの心証はマイナスになってしまっているんじゃないかと心配しています。わりとマジで。

2.作画・演出について

①良かった点

作画については平均的に良かったと思いますし、いわゆる「作画崩壊」と言われる悪目立ちするような箇所は無かったと記憶しています。
特筆すべき点としてはキャラクターの顔がアップになるカット。キャスト陣も絶賛していましたが印象的な場面での表情は個性が表れていてめちゃめちゃ可愛かった…。作画で一番気合入ってたのはミラクの顔芸だった気もしないではない。

よく動くなあ

キャラデザの印象も相まってネット上では「女児アニメ」と言ってる人もいましたけど確かにそんな感じだなと。プ〇キュアとかアイカ〇の系譜と言われたら伝わるでしょうか。
私みたいな大きなお友達じゃなくて子供向けアニメに振り切っていたら評価もまた変わっていたかもしれない…。

そしてアリルズ配信を見ていたファンには嬉しい3Dモデルによる配信パート。親の声より聴いたBGM!ということで沸いた人も多かったと思います。
「ミラトーーク」や「アリアリアリアリアリーヴェデルチ!」など有名どころのネタが飛び出したりしていたのも普段の配信っぽい雰囲気でしたね。その分アニメ本編とのノリが離れてしまっていた感もありますが…。
クリスの不思議ちゃんっぷりは3Dモデルの方が好きかもしれないです。見た目はクール系美少女なので。

②悪かった点

アニメ放送前に「進撃の巨人を制作しているWIT STUDIOが…!」とやたら強調していたので結構期待していたのですけども。
上述のとおり平均点は担保されていました…が、期待値ほどではなかったのも確かです。特に印象的だったのが第9話のアルティメット回で、リズが止まっている(ように見える)参加者の間をすり抜けていくシーン。レースの描写としてこんなスピード感の無い映像ってあるか?!と逆に衝撃を受けた記憶があります(よくよく調べたら第9話はシグナル・エムディの担当回らしいですが)。
と言ってもライブシーンは完全3Dモデルでしたし、他に激しく動くようなシーンもなかったのでそもそも評価が難しいっていうのはあるんですけどね。第7話のゲーム回くらいかな。

そしてバーチャルアーティストを描く物語であるならライブシーンは演出のキモであるはず…ということで第1話の「Linx」と第12話の「SHININGi」はひいき目無しに圧巻でした。

が、問題なのは物語の中盤で同等の盛り上がりを持ってこれなかったこと。ミラクたちが未熟であることを表現する意図もあったと思いますが、(それぞれのオリジナル歌詞とはいえ)同じ曲を同じような演出で何度も聴かされる以上はどうしてもマンネリ感があります。第12話を除いても5、6回課題曲を聴いてるので…。
例えばデュエットで歌うとか視覚的な差異があるとまた違った印象になったのでは。せっかくミラクとクリスはずっと一緒にいたわけですし。

『絆のアリル』ではバーチャル世界ならではの「自由」を生かしながらも、地に足の着いたシーンを作りたかったんです。

メガミマガジン 2023年6月号 駒屋監督インタビューより

キャラクターが地道に頑張っているのはすごい伝わってきたんですけど、逆にバーチャル世界の自由度が伝わってこなかったのがちょっと痛かったかな、というのが正直な感想です。
個人が持つ端末である「バニティム」で簡単にバーチャル世界へダイブできるほど技術が発展しているのに、姿も行動も現実世界とそれほど変わらないなら一体何のためにバーチャルアーティストを目指しているのか?生身ではできない決定的なこととは何なのか?といった点が不明瞭なままになってしたような気がします。

クオンが日常的にファンクラブの子たちから外見で判断されている描写みたいなのがあれば、もう少し終盤の展開も違って見えたかも

例えば今のライブ演出ってそりゃまあすごいわけですよ。少し前にYOASOBIのライブ行きましたけど照明とか映像の演出にビビりましたもん。現実でこんなサイバーな雰囲気作れるんだ!って。
ちなみに私はバーチャルアーティストの強みはライブや配信での派手なエフェクトとかじゃなくてまた別にあると思っていて、それはまた次回の記事で触れたいと思います。


というわけでできるだけ公平な目線で書いたつもり…ではありますけどアニメ放送決定からずっと注目して見ているコンテンツなので思い入れの分だけ偏ってしまっている点もあるかもしれません。

次回はアリルズプロジェクトのもう一つの柱であるアリルズ配信とアニメ本編の関係性について深堀していきます。

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