ジル・ドゥルーズ著『差異について』を読んで

『差異と反復』や『意味の論理学』を通読してみたいけれど長い本を読むことが体力的にも年齢的にも辛く、短めの論考に触れるに留まっています。そんな中で手にしてみたのが今回紹介するジル・ドゥルーズ『差異について』になります。タイトルになっている短めの論考に訳者の解題と「ベルクソン1859-1941」という論考という三部で構成された本です。1956年、ドゥールズが30歳の時に書かれた本になります。ベルクソンの差異に関する重要な文献といえそうです。以下、重要だと感じた箇所を引用します。

主体は傾向なのだ。一つの存在は主体ではなくて傾向の現れであり、またさらに一つの存在は、ある傾向が別の傾向と対立関係をもつかぎりにおいて傾向の現れとなるものである。こうして、直観は差異あるいは分割の方法としてあらわれる。この方法は空間的分析とは別のものであり、経験の記述以上であり、(一見したところ)先験的分析より以下である。この方法は所与のものの諸条件までたしかに到達するが、その諸条件とは〈主体としての=傾向〉であり、その諸条件そのものが、或る仕方で与えられているものであり、体験されるものである。

ジル・ドゥルーズ『差異について』河出書房新社p.29−30

これはベルクソンの解説をしているようにも読み取れますが、ドゥルーズ自身の存在論の定義のようにも読み取れます。また、以下の箇所も重要だと感じました。

要するに持続とは差異を生ずるものであり、差異を生ずるものはもはや他のものとの間に差異を生じるのではなく、それ自身との間に差異を生ずるのである。差異を生ずるものが、それ自体一つの事物、一つの実体となったのだ。

ジル・ドゥルーズ『差異について』河出書房新社p.41−42

程度の差異、本性の差異などが出てきますが、差異こそがまずあり、その差異が…と考えた方がドゥルーズの哲学を理解できるのかもしれません。今回紹介した『差異について』と『ベルクソニズム』を合わせて読む必要があるのかもしれないと感じました。そうした準備をした上で、『差異と反復』を読むとよいのかもしれません。

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