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「虹の麓が乾く頃」感想 作者:長久手さん(@na9akute)

一見無秩序そのものに見える小説ばかりの本棚にも、いつしか秩序が生まれている。
一番昔から使っている一番大きい本棚は縦4段×横2段8つの場所に区切られていて、その一つ一つが微妙に異なった本達が詰め込まれているのだけれど、こんな風に綺麗に意識をして分けた記憶がないのでなんとなく分けているんだろうと思う。
ただそのなんとなくも繰り返すとそれなりにカオスを脱するのだ。
うちの場合はこのようになる。
① 左上が社会学系の本やら、外国の文化とかの教科書が詰め込まれている。一番手に取る頻度は少ない本達だけれど、なんとなく今の自分を形成しているような気がして下の方に置くのは忍びないという理由でそちらに置かれているのだ。なんとなく神棚とかを上の方に置く感覚に似ている。
② 次にその隣の一番右上。そこは西洋を問わない詩集やら、漢詩やらなんか韻文に関する本(ただのヒップホップのリリック分析本)とかが並んでいる。個人的には昔から詩集はちょっとハイカルチャーだと見做しているようだ。
③ そして左の真ん中の上の方ここには古典やらが並んでいる。ここは実はスカスカである。
④ その隣の右の真ん中上にはSFがギチギチに詰め込まれている。スタージョンとからへんの読めなかった本もここに自動的にぶち込まれる。
⑤ 左の真ん中の下。ここが一番手に取りやすいので読む本が詰め込まれやすい。カートヴォネガットやらあたりが鎮座している。
⑥ その隣は好きな国内の小説がギチギチになっている。
⑦ その下、最下段にはあまり読まなかった日本の小説。
⑧ そしてその隣は「この本買ったっけ?」と思うような本だ。大体暇なときはこの段の本を読む(読もうとする)
そしてその本棚の隣には同人などの小説が置いてある。わりと良い感じになっている。
今回読んでいた長久手さんの「虹の麓が乾く頃」はどこに置かれていたかというと⑥のところだった。中島らもと三島由紀夫の間にスッと入っていたのを偶然発見した。古典になっても色あせない文章であり、ページをめくれば常に刺激があり、人間が知覚できない韻文なのかと思えるような素敵なテンポで書かれ、その描かれる物語は美しくて、総合的に見ても文句なしに素敵な本だと思っているのだ。
物語の語り口は極力抑えられた一人称にもかかわらず、アリス・マーガトロイドの瞳に映る景色は鮮やかで、どこか懐かしく、東方の小説集とはいえなかなかお目にかかれない安心感がある。神。
いや、本当にレトリックの使い方なども含めて淡々とした文章なのに、いきいきと登場人物は動き始めていてそれが本当にすごい。
外国語文学合同の時のガルシアマルケス風味のあの物語もすごい好きですが、こういう自分のペースで書く文章でこういう文体って本当に身についてないと出来ないと思うので、いや本当に長久手さんのめちゃめちゃすごい語彙とかそういうのを感じて欲しいところです。
内容も素敵なのであえてここでは語らないでおきたいと思います。


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