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見知らぬ男に猫パンチされたんだが

都内のこじんまりした居酒屋のカウンターの隅っこでひとり、夜ご飯をたべていた。

初めて入ったお店だったが、落ち着いた雰囲気で、料理も美味しくとてもいい感じだった。不意に猫パンチをくらうまでは。

もともと席数の少ないお店だったので、すぐに満席になった。私の隣には見知らぬ男。

その男がお酒を何杯か飲んだころ、突然話しかけてきた。戦略コンサルのお仕事をしているのだとか。せっかくなので、仕事について色々とお話を聞いてみたら、頭の回転が速いというか、話し方が仕事人間というか、優秀なんだろうなーという印象だった。

そんなこんなで美味しいご飯を食べながら、楽しくお話をしていたのだが、急に、前触れもなく、ほんと、急に「猫パーンチ」といって脇腹をパンチしてきた。

(は?)
一瞬思考停止する私。

その後も調子に乗って2.3回、猫パンチと見せかけたお腹タッチをしてくるものだから、「セクハラですよ。やめてください。」と真顔の私。

一旦はやめたものの、しばらく経ってからまた「猫パーンチ、あ、間違えちゃった」

私「なんなんですか、ほんとやめてください。(真顔)」

猫「間違えは誰にでもあるんだから、それを許せないのは良くないことですよ」

(怒)& 無視

猫「人間は悪い人が多いからパンチするんです」
私「人間嫌いなら触らない方がいいですよ」

猫「ぺっぽこさん」
私「…」

猫「ぺっぽこさん」
私「…なんですかそれ?」
猫「ぺっぽこさんは小さい頃からずっと存在しているんです。ぱっぽこさん、ぴっぽこさん……ぽっぽこさんまでいて、正体がわかっているのはぺっぽこさんだけなんです。」
私「想像力豊かですね、小説にしてみたらどうですか?」
猫「ぺっぽこさんの正体を明かそうとした者は消えるんです」
私「そうなんですね(今すぐこの場から消えてくれ~~~)」

趣味はぬいぐるみ集めで、あらゆる手段でぬいぐるみを集めるのだそう。それからクワガタ取り。クワガタを取るためだけに、全国の山を登るのだそう。

気分よく食事をしている最中に見知らぬ男に突如猫パンチを数回くらい明らかに気分が悪くなった私に対して、しまいには「今度クワガタ一緒に取りに行きましょうよ!」のお誘い。

(なんでお前と一緒に行かなあかんねん)

「虫嫌いなので行きません」

退席
退店

と、こんな一幕がありました。

ぬいぐるみ集めやクワガタ取りなんて、なかなか人と被らない趣味で良いと思うし、仕事の話をしている時は真剣に考えている風ではあったが、一方的な猫パンチとクワガタ取りへの勧誘は本当に意味がわからなかった。

「変わっていますね」と言われたい族なのか、とにかく人を煩わせることに楽しみを覚えるタイプなのか、なんなのか分からなかったが、個性の発揮の仕方を間違えているようだった。

この世の中には本当に色々な人がいて、自分にとって理解し難い人もたくさんいる。

みんなが相手を思いやって、分かり合える世界ならどんなに楽で楽しいことだろうと心底思う。

人にとっての迷惑行為は、受け手によって変わる。もしかしたら、初見の男に猫パンチをされても気にしない人もいるかもしれない…(?)

キレようと思ったらキレることもできたし、隣にいるだけで嫌だという感情を頭のてっぺんからあびせることだってできた。

だけど、相手に負の感情を与えてしまったら同レベルの人間になってしまう。なにより、感情コントロールができない自分に対して後々嫌悪感に追われていただろう。ぐっとこらえた自分を褒めてあげようと思う。

そして、猫パン男を悪く言う代わりに、ヤツの良かった点をピックアップしてみようと思う。

猫パン男の良かった点。
それは、知らないお隣さんに話しかける勇気があったこと。少なくとも、最初の数十分は楽しかったから。

嫌な部分が圧倒的に多かったとしても、誰にでもひとつくらいは良いところもある。ひとつくらいは。

良いところにだけ注目できれば良い。
そうやって生きていけば、いくらか大人になれるはず。

とは言いつつも、あーあ、どうか、もう二度と会いませんように!


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