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チェコ買い付け日記2023③「また始まりは雨」

今回プラハではなくウィーン行きの飛行機を選んだのは、チェコ第2の都市ブルノまで電車で1時間半ほどで行けるから。3時間かかるプラハから往復するよりも楽なのではないかと思ったのです。
前回の買い付けでブルノではすてきな本にたくさん出会えました。
そしてなにより、ゆったりとした、でも都会なブルノにもう一度行きたいと思っていたのでした。

ウィーンからブルノまでの電車はチェコの国鉄車両がやってきました。
その窓が汚い。雨粒の跡と埃で景色がぼんやりしています。この時だけではなく、ほとんどの場合に電車の窓や車体は汚れています。日本の鉄道の当たり前に脱帽するばかりです。
窓の外の風景を写真や動画で撮っていましたが、後で見返すと白く曇って幻想的でした。

ウィーンを出発したときは青空でしたが、だんだんと雲が増え、厚くなり、暗くなり、そして雨が降ってきました。
雨はどんどん強まり、窓ガラスを水の筋が覆い尽くしてしまいました。
約24時間前のドライブを思い出します。夫や友人の「さすがだよね」という声が聞こえるようです。でもどちらも外にいるときでなくてよかったと思いながら、窓の外の白く煙る雨を眺めていました。
しばらくすると雨は止み、遠くの方が明るくなってきました。
ただ厚い雲はまだ残っていて、黒い雲の向こうに光が差してきれいです。
こちらでも「ゲリラ豪雨」というような言葉があるのでしょうか。

ブルノ中央駅に到着し、トラムで宿へ向かいます。
毎回頭が混乱するのですが、車が右側通行の国ではもちろんトラムも右側通行。
左側通行に慣れた私は、というより方向音痴の私は、自分が行きたい方向と逆側のホームで待っていることがよくあります。
特にブルノ中央駅のトラム乗り場は右方向へ行く乗り場と左方向へ行く乗り場が複数平行に並んでいて、ごちゃごちゃしています。
トラムには路線の番号がついていて、自分が乗りたい路線番号のトラムが来たのでスーツケースを引っ張り上げて乗り込んだのですが、案の定逆方向でした。
1駅行って向かいのホームに渡ります。

ポツポツと雨が降り出しました。
街の中心部はトラムの1駅が短く1分ほど。たった5駅ですが、その間に雨足が強くなりました。トラムを降りると土砂降りです。
傘を差し、石畳の上をスーツケースを引っ張って宿まで歩きます。
Googleマップが示している場所に着いたのですが、どうも違うようです。

今回はホテルではなく、Airbnbで普通のアパートの1室を借りてみました。
だから看板が出ているわけでもなく、事前に送られてきた入り口の写真だけが頼りです。両隣の建物も見てみたのですが違います。
誰かに聞きたいけれど、土砂降りの中を歩いている人はいません。
来る途中にお店があったので、そこで雨宿りがてら聞こうと歩き出すと、工事中のお店の中で作業員の人たちが煙草を吸って休憩していました。住所を見せて聞くと、検索してくれて「ここだよ」と私がさっき行った場所と同じ場所を…いや、よく見ると違います。その向かいの建物。通りの反対側でした。そして私がチェックしているのも同じ場所。単純に私の見間違いです。

お礼を言って戻ります。
無事に写真と同じ入り口が見つかりました。

建物には入れましたがエレベーターは専用の鍵がないと使えず、1フロア上までスーツケースを引っ張り上げ、鍵を開けるのに四苦八苦し、部屋に入ると鳥が鳴く声が聞こえました。雨が止んだのです。
明るくなってきました。
夫と友人のニヤリとする顔が浮かびます。

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