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チェコ買い付け日記⑬「売り物というより自分が見たい」

ラダの記念館は村のメインストリートから歩いて5分ほどの場所にあります。
ここはプラハに住んでいたラダが別荘にしていた家。
ラダが生まれ育った家とは別の場所です。
私以外に見学者はいなかったため、1階と2階に分かれてたくさん飾られた絵を行ったり来たりしながら見ます。

この記念館には原画もあるけれど多分ほとんどはレプリカで、原画は博物館や美術館や一般のコレクターが所蔵しているようです。
ラダはチェコを代表するイラストレーターであり、画家でした。
ラダの絵にはその時代の風俗が描かれています。
穏やかな村の風景や、ごく一般的な村人たちの日常生活、お祭りやお祝い事の様子がよく分かります。
もちろん絵としての価値もありますが、風俗史としての価値もあるのです。

もう一つの特徴は何と言っても動物たちのユーモラスな絵。人間の生活の中に動物の絵が描かれることももちろんあるけれど、動物が人間のように振る舞う絵もたくさんあります。
鳥の指揮に合わせて楽器を演奏する熊、ヤギ、アヒルと譜面を持つ猫。
ゆりかごに3匹の子猫を寝かせ、それをあやす猫の夫婦。
人間と並んで腰掛ける猫、豚、ヤギ。(『Mikeš』の絵です。)

しかもその絵は単に「ほのぼのした絵」と形容されるものとはどこか違います。
子どもの頃に右目を失明したために風景を片目で見ていたラダの絵は、遠近感がないと解説されています。
絵に詳しいわけではないので、そう言われて納得というほどではないのですが、どこかアンバランスな、「ほのぼの」ではないような気がするのはそういう点なのかもしれません。

グッズを色々と買い込みました。
一番重いのはラダの全ての絵が載っていると説明された図録。
全てカラーで743ページ、縦30cmほど、厚さは7cm弱あります。
あまりの大きさに一瞬怯みましたが、どうしても欲しい!!
買いました。
売り物というより自分が見たいのです。

リュックに入れた荷物が重すぎてよろよろと歩きます。
この状態で駅まで歩くことを考えると気が遠くなりそうだったので、帰りはバスに乗ることにしました。
バスは2つ隣のStrančice駅へ向かいます。
駅までは20分ほど、料金は80円弱です。
チェコは交通費と食費が安くて助かります。

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