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チェコ買い付け日記2023⑲「チェコの街にある花」

春から夏にかけてはチェコでも日本でも花の季節。歩いているといたるところで花が咲いています。
南国だと鮮やかで濃い色の大きな花のイメージですが、日本よりもだいぶ北にあるチェコでは、薄い色やくすんだ色の小さな花が多いように感じます。高山植物も小さく薄い色、「可憐な」という形容詞が付けられることが多いので、気温が違うと種類はもちろん、色やその濃さ、大きさも影響があるのでしょう。

この時期はエルダーフラワーの時期。いたるところで白い小さな花が満開です。ヨーロッパではお馴染みで、この時期は花を摘んでジュースやシロップを作る、というのをよく聞きます。
そういえば子どもの頃読んだ物語に、花を摘んでシロップにして瓶に詰めて…というようなことが描いてあり、なんてすてきなんだろうと憧れた記憶があります。あれはもしかしたらエルダーフラワーだったのかもしれません。

旅のあいだ何度も乗った列車の車窓からは、どこに行っても一度は広大な菜の花畑が見えました。見えている場所の全てが黄色、というところもあるくらい。ザワークラウトなどでキャベツをたくさん食べるのでキャベツ畑かな?と思いながら眺めます。
日本の長距離列車に乗っていると一番よく見るのは田んぼ。車窓と食文化は繋がっているのだな。

咲いている花以外にも、チェコの街を歩くようになって気がつくのは、花束と同じようにリースが置かれていることです。
リースは死者を送るためにも使われてきたようで、⑰で紹介したヴィシェフラドのスメタナのお墓のように、墓地にもリースが供えられたお墓がいくつもありました。
プラハでは、有名なカレル橋の一つ北側のマーネス橋のたもとに第二次世界大戦の記念碑があり、去年訪れたときにはそこに茶色くなったリースが置かれていました。

パルドゥビツェでも、歩いている途中の公園にリースがたくさん供えられている記念碑がありました。
第一次世界大戦と第二次世界大戦の犠牲者を追悼する記念碑だそう。
もりもりと積み重ねられたリースは、遠くから見ると植え込みのようにも見えました。

大きな記念碑でなくとも、建物の下にリースが置かれていたりもします。
建物の壁に、その場所にゆかりのある人のプレートが取り付けられていることがあり、そこにリースや花束が置かれているのです。
写真はハンガリーの英雄ラーコーツィ・フェレンツ2世のプレート。プレートによるとプラハに留学し、この場所に住んでいたのだそう。
1676年から1735年を生きたラーコーツィ・フェレンツ2世。異国の地で、そして亡くなって300年近く経ってなお、こうやってリースが供えられる彼はハンガリー国民にとって偉大な存在なのでしょう。
リースに興味が出たからこそ知ることができたことでした。

もちろん、リースはドアにも飾られています。
私が気に入ったのは斜めの格子模様になっているドアに、色褪せたリースが飾られたもの。ストラホフ修道院に行く途中に見つけました。
リースもドアもすてきな組み合わせでした。

本を抱えて地図を見ながら目的地を目指すのですが、道を歩くたびに新しい景色があって、それがすてきで、写真ばかり撮って、なかなか前に進めないのでした。


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