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チェコ買い付け日記2023②「乗り継ぎの不安」

朝4時45分、日の出前に乗り継ぎのドバイに到着しました。
まだ暗い時間。だんだん飛行機の高度が下がり、窓から外を見下ろすと真っ暗な中に黄色い丸い明かりが等間隔に並んでいく筋も走っています。多分道路の明かりですが、まるでニューヨークの劇場の入り口か、女優ミラーと呼ばれる楽屋の鏡の周りにつけられた照明のよう。暗くてそれ以外の場所があまり見えないので、黄色の丸い点だけが線になって続く光景に、どんな場所なのだろうと想像を掻き立てられます。
眺めていると空港に近づくにつれて街の明かりが増えてきました。白い灯りが増えてきて、道路の黄色い灯りは夜景の一部になっていきました。

隣の席には20代だと思われる日本人の男の人が座っていました。スペインに住んでいる友人を訪ねてマドリードへ行くそうで、乗り換えをしたことがないというので、じゃあ一緒に行こうということになりました。

ドバイの空港は巨大で近代的で、乗り継ぎだけで空港の外に出ないと自分がどこにいるのか忘れそうですが、それでもアラビア文字や頻繁に行き交うヒジャブを着けた女性たちの姿に、「異国」という言葉を強くします。
同じ中東でも前回乗り継いだドーハが砂で霞んだ砂漠の地だったのに対し、ドバイは暑いのは同じだけれど、窓のアラベスク模様の向こう側に近代的なビルがぐるりと立ち並ぶ様子がくっきりと見え、同じ中東でも一括りにできないと感じます。

広い広い空港の中を乗り継ぎを共にすることになった彼と「こっち?ですよね??」と二人して大勢の人の流れについて行き、このボードで出発ゲートを確認するんですよ、と教えてみたり。
彼はマドリード行き、私はウィーン行きなので途中で別れたのですが、彼が「いい旅を」と言い、握手をして別れました。

チェコやそれ以外の国でも、別れ際やお店を出る時に「Have a good day」と言ってくれる人が多く、すてきだなといつも思います。同じように「いい旅を」と自然に言える若い人を見習わなければいけないなと思いながら、空港内を走るAエリア行きの電車に乗っていたのですが、ふと私が目指している出発ゲートは本当にAエリアで合っているのか?という疑問が湧いて来ました。
さっき見たボードの、ウィーン行きのゲート番号が表示された画像がぼんやりと頭に浮かびます。よく考えると同じヨーロッパ圏へのフライトで、エリアが違うような遠い出発ゲートを設定するだろうか?もしそうなら出発ゲートはどういう分類で決められているのだろう…
電車を降りてすぐにゲート確認のボードを見ると、案の定、マドリード行きの飛行機を目指して歩いて行った彼と同じBのエリアに行くべきだったとわかりました。

ABCと3つしか選択肢がなく、ボードで確認してBと書いてあったはずなのに、次の瞬間にAのゲートを目指して歩いている私。
私の記憶力は、というより情報処理能力はいったいどうなっているのか。
これから始まる2週間の旅に迫り来る不安から逃げるように、私はBと書いてある表示だけを目指して歩いたのでした。



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