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『グラス・オニオン』創造的破壊。

2019年に公開された『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』に続く、シリーズ2作目の作品で、2022年、Netflixにて配信された。

監督・脚本は引き続き、ライアン・ジョンソン。
ファンからは不評な『スターウォーズep8』の監督。
ナイブズアウトシリーズは好調のようですね。

キャスト

主役の名探偵ブノワ・ブランにはダニエル・クレイグ。
007のイメージを払拭し、コミカルな演技で楽しい。
事件がないときは、退屈で風呂にこもっているところはポワロよりホームズのそれ。

大富豪マイルズ・ブロン役にはエドワード・ノートン。
シリコンバレーのIT起業家風で鼻持ちならない感じがグッド。

本作のキーマン、アンディ役にジャネール・モネイ。
ミュージシャンらしいです。前作におけるアナ・デ・アルマスのポジション。

他にもデイブ・バウティスタ。(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのドラックスなど)ちょい役に、ヒュー・グラントとイーサン・ホークが。

ストーリー

大富豪…というか起業家で金持ちのマイルズが知り合いの5人をギリシャの孤島に誘って、謎解きゲームを主催し、週末を余暇を過ごそうという企画を思いつき、パズルの箱の中に招待状を入れて送ります。

犯人当ての本格ミステリでクローズドサークルものですね。

しかし、5人のうち誰かが、名探偵ブノワ・ブランにもパズルをリセットし、招待状を送り、招いてしまいます。

集まったうちの4人はそれぞれマイルズの資金のおかげで成功した人たちで、残った一人、アンディはマイルズの共同経営者だったが、手酷い裏切りにあい、マイルズとその知人たちと確執を抱えている模様。

やがて謎解きゲームの開始をマイルズが宣言するも、名探偵ブランは一瞬でそれを解き明かし、場を白けさせてしまう。

ブランは最初、金持ちのパーティーに招かれた一般人という風で、完全アウェイな感じだったのですが、物語序盤のピークで明晰な推理を炸裂。逆に金持ちたちが間抜けな感じに見え、名探偵を演出する場面として最高でした。

だがその夜、グラスの酒を口に含んだ一人が倒れ、死亡してしまう。
しかもそれはマイルズを狙ったものだったが、別の人物が誤って口にしてしまったものだった。

パニックの中さらにアンディも銃で撃たれ、物語は急転直下、回想へ。

実は参加者のアンディは島へ招待される前に何者かに殺害されており、彼女の死の真相を突き止めるために、双子の妹が代わりに潜り込んだのだった。
ブランは彼女から依頼を受け、パーティへ同行していた。

後半でガッツリ回想が入って物語の前提がガラッと変わってしまうのは面白い構成で、楽しいですよね。

ブランはマイルズをすべての犯人として告発します。
一連の殺人はマイルズが保身のためにしでかしたことだった。

撃たれたアンディもとい妹ヘレンはすんでのところで助かり、マイルズを追い詰める証拠を持って現れる。

マイルズの反撃に遭うも、ヘレンはマイルズの邸宅を燃やし破滅させます。

感想

前作よりも個人的には良かった。ミステリなので当然、アクションなどはなく、登場人物の会話でストーリーが進んでいくのですが、構成の妙か、飽きずに物語についていくことができた。

ナイブズアウトシリーズは、アガサクリスティの小説などからインスパイアされているとはいえ、ライアン・ジョンソンのオリジナルです。
過去のヒット作のリメイクでもスターウォーズのような根強いコンテンツの再利用でもなく、新たなIPを創造できるのは、クリエイターとして力のある証拠ではないでしょうか。

マイルズが自分の事業が成功した理由、自らの哲学を語る場面がある。
破壊的創造。すでに皆が当たり前と思っているものをあえて壊す勇気。
それが必要なのだと。おおむねそのような意の台詞を口にするのですが。

スターウォーズを破壊した男のセリフにしか聞こえず、思わず口元がほころぶ。
ライアン・ジョンソンにはアンチなどものともせず映画作りに驀進して欲しいです。

プロットについては、ちょっと引っかかるところもあると思います。
アンディが撃たれたけど、助かるシーンの理由が、ポケットに入れた手帳て……。
古典ミステリのオマージュなのでしょうか。
美術全体がアニメ的な感じで、筋の強引なところや、名探偵などという存在にいちいち突っ込ませないので、欠点にはなり得ませんが。

肝心の謎解きに関しては、あっけないもので、クリスティというよりホームズもののような感じ。謎の不可解さに対しては真実はちっぽけなもの。

続編の制作も決まっているそうなので、今度は映画館で見たいぞ。



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