映画時評『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』
まず最初に僕はミステリにもクリスティにも明るくありません。
今作『ベネチアの亡霊』も原作は未読。なんならアガサ・クリスティは一冊も読んだことがないという体たらく。
それでもこの作品に魅せられ、劇場に足を運びたいと思ってしまうのは、古典ミステリが放つ、オールドファッションでレトロチカな馨りのせいだろう。
監督、製作、主演を務めるケネス・ブラナーは、映画の外観、舞台美術や衣装に至るまでを精細にコントロールし構築している。
本作の舞台であるベネチアも、ポアロと古典ミステリの香気を