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映画時評2022&2023

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2022年10月から2023年12月に劇場公開していた映画の感想記、時評をまとめたものです。
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2023年10月の記事一覧

映画時評『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

スコセッシの新作。前作『アイリッシュマン』がNetflixの配給で、今作はAppleが配給している模様。なので劇場に行ってもパンフレットが置いてなくて悲しい。 スコセッシといえば、「マーベル映画は映画ではない」という強烈な発言で、論争を巻き起こしたことがありましたが、じゃあお前の新作はどうなんじゃい。というお手並み拝見の気持ちで見に行きました。 別にマーベルに肩入れしているわけじゃないですが、そこまで批判するんならそれ相応の映画を見せてもらおうかという気持ちになるでしょ?

映画時評『ザ・クリエイター 創造者』

不安な予告だった。ドンパチの映像ばっかで、人間vs機械の単純なストーリーしか読み取れない。 ギャレス・エドワーズ監督の映画は、ハリウッド版『ゴジラ』と『ローグ・ワン』の二作を見ていた。映画を見終えたあとで、初めて認知した。 まず『ゴジラ』の話からさせて頂きたい。 こいつは正直、大味な怪獣映画で、あまり印象に残っていない。印象に残っていないが、ある点において個人的100点満点のジャックポットを叩き出している映画でもある。 このOP。 陰謀論めかした記録映像風になっていて、

映画時評『キリエのうた』

僕のなかでは『ラストレター』以来の岩井俊二です。 2017年のこと、『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の劇場アニメ版が公開され、なぜか賛同者が少ないような気がしますが、前年に公開された新海誠の『君の名は。』より、はるかに気に入ったのを覚えています。 『君の名は。』の三葉より、男の子より背が高くて、ほんの少し大人な、なずなの方に魅力を感じた。 化物語の戦場ヶ原じゃねーか。みたいに言われてるけど。(シャフト製作だからね) 『君の名は。』旋風が吹き荒れたあとの公開

映画時評『名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊』

まず最初に僕はミステリにもクリスティにも明るくありません。 今作『ベネチアの亡霊』も原作は未読。なんならアガサ・クリスティは一冊も読んだことがないという体たらく。 それでもこの作品に魅せられ、劇場に足を運びたいと思ってしまうのは、古典ミステリが放つ、オールドファッションでレトロチカな馨りのせいだろう。 監督、製作、主演を務めるケネス・ブラナーは、映画の外観、舞台美術や衣装に至るまでを精細にコントロールし構築している。 本作の舞台であるベネチアも、ポアロと古典ミステリの香気を