「日本でも、依存・服従させるマインドコントロール自体の問題に着目した法規制を検討すべきだ」

タイトルは、朝日新聞記事マルチ商法、心ごと息子奪われた 母「カルトに通じる苦しみ」に寄せられた、島岡まな先生のコメントから。消費生活相談を受け、マルチ商法にお子さんを「奪われた」というご相談を受けた経験のある者として、強く同意します。

島岡先生は、2019年に発行された消費者法ニュース「ニセ科学特集」にも「フランスのカルト的代替医療の規制について」を寄稿されています。

フランスでは、2001年5月30日に「人権並びに基本的自由を侵害するセクト(日本でいうカルト)的活動の予防並びに処罰強化を目的とする法律(以下、反セクト法と略す)」が成立し、マインド・コントロール(洗脳)罪ともいえる無知・脆弱性乱用(不法理由)罪が新設されてから、既に18年が経過している。それに伴い、翌2002年に「セクトによる人権侵害への警戒及び闘争のための省令横断的ミッション(対策本部)(通称Mivludes=以下、ミヴィリュードと略す)」が設置され、活発な研究調査・啓発活動を行い、毎年年次報告書も発行されている。しかし、そのような長年にわたる国家的対策にも拘わらず、代替医療分野におけるセクトの浸透は目覚ましく、最新(2016年度)の年次報告書においても、セクト活動としてリストアップされている活動の26%が代替医療であり、それにサイコテラピーを合わせた割合は、実に全体の39%(約4割)となっている。

https://clnn.org/archives/backnumber/119

こうしてみると、セクト法が導入されているフランスでも、問題は起こり続けているようです。しかし、20年以上前にセクト法を制定したフランスとは違い、カルト教団統一教会の被害者により元首相が殺害されるような大事件が起こってしまい、やっと「マインドコントロール」による被害の実態に目を向けるようになったこの国には、問題に対応し、被害を救済し、今後の被害を防止のための法制度は必要なはずです。

実は、島岡まや先生は、2019年に公開されたこの記事でも、カルト教団統一教会の問題ついて指摘していました。

日本は、統一教会による霊感商法事件やオウム真理教による地下鉄サリン(無差別殺人)事件を経験した国であるのも拘われず、カルトはほぼ野放し状態で、カルト対策のための学校教育、啓発活動も決して十分とはいえない。

https://clnn.org/archives/backnumber/119

もし、統一教会による霊感商法が社会問題となった頃、オウム真理教による地下鉄サリン事件が大きな社会問題になった頃、マインドコントロールによる被害に政治が向き合い、被害防止のための法制度ができていたなら。安倍元首相もあんな形で亡くならずにすんだのではないかと思うと、残念です。

そして、もしもこのまま被害防止のための法制度ができなければ、追い詰められ絶望したカルト二世、マルチ二世の方が自ら命を絶ったり、反社会的な事件を起こしてしまいかねないのではないかと、強く危惧します。

違法な勧誘を行い消費者庁よりマルチ商法業者の日本アムウェイが処分されたとき、カルト問題に詳しいジャーナリスト・江川紹子さんがこんな風にツイートされています。

冒頭にご紹介した記事には、 ”会員の家族らでつくる「マルチ被害をなくす会」が今年6~9月に行ったアンケートでも、回答したメンバーら61人のうち85%が「(家族が)洗脳され、忠告に耳を傾けてもらえない」という悩みを抱えていた。 と紹介されていました。

また、記事では、マインドコントロールの問題に詳しい西田公昭先生が「これまでは会員本人の経済被害にしか焦点が当たってこなかったが、家族も被害者という視点を認識する必要がある」とコメントを寄せておられました。

これから消費者契約法など消費者法が改正され、マインドコントロールにより被害に遭ったと自覚されている方の金銭的な被害は救済しやすくなるかもしれません。しかし、「洗脳され、忠告に耳を傾けてもらえない」マインドコントロールされたままの状態では、当事者は金銭的な被害に気付くことも極めて困難です。
それは、消費生活相談の現場にいるものとして、とても辛い。

だからどうか、統一教会のようなカルト教団被害だけでなく、商業カルトと呼ばれるマルチ商法などに対しても、法規制を検討いただきたい。
「日本でも、依存・服従させるマインドコントロール自体の問題に着目した法規制を検討すべきだ」と、強く願います。