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岬とおばあちゃん

岬に「俺の中で作者はばあちゃんカテゴリー」と衝撃の発言をされました。



その真意を探るべく、
いろいろ質問してみました。


私「岬のおばあちゃん、私と似てるの?」

岬「いや、
おっとりしてて可愛いばあちゃんなんで、
作者とはあんま似てないっすね」


ばあちゃん呼ばわりしといて
本家ばあちゃんとは似てないそうです。


この話をしているとき、
岬は内界の居間でくつろいでいます。


居間というのは、
私の中の彼らと複数会話するとき用の
大きな部屋です。


白を基調とした明るい居間で、
中央に掘りごたつがあって落ち着きます。



詳しくはこの記事の真ん中辺りで↓


「この居間に来ると、
ばあちゃんち思い出すってだけっすわ。
久しぶりにばあちゃんの煮物食いてえなって
なります」


おばあちゃんの煮物が好きな孫は
なかなか渋いですね。


掘りごたつのテーブルの上には
みかんが山ほどカゴに盛られています。
たしかにおばあちゃんの家っぽい。



「けど、
ばあちゃんもう煮物作れないんすよね。
今、ホーム入ってて」



「えっ」



「認知症進んで、
会いに行っても俺のことわかんなくて、
俺は永遠にホームの新人介護士だと
思われてんすけど」



岬は淡々とみかんをむいています。



「記憶もうら若き乙女の頃に戻ってるんで、
恋人のヒロシさんとのデートの話ばっか
してくるんすよ」



「孫に昔の恋人の話を……?」

「いや、ヒロシはじいちゃんの名前っすわ」

「うわっときめく」

「作者と似てんのはそこだけっすね」

「どこ?」

「昔から好きな相手変わんないとこ」


岬が日本茶をすする音が平和に響きます。


予想外のことを言われて照れながら、
しかし大きな問題に気づきました。


「ちょっと待って、岬。
だとしたら私、おばあさんになってから
延々と彼の話してたらどうしよう。
誰?って周りを戸惑わせるよね」


すると、
岬は何とも言えない笑みを浮かべました。



「作者……
常人はなかなかうちのばあちゃんみたいな
可愛いボケ方できないっすよ。
心配しなくてもそうはなれません」



「何なんだ、お前は」


この子、
めちゃくちゃおばあちゃん子ですね。



「そんな先のこと心配してないで、
今できることをすべきっすわ」

「それもそうだね」

「最後の日まで書き続けるのが目標なんでしょ。
なら、叶えてください」


二個目のみかんをむきながら、
さらっと応援してくれました。


岬はいつも気だるげですが、
実はブラコンだったり、
おばあちゃん子だったり、
とにかく情の深い子だなと思います。


「うん」

「例えば俺の出てる本が爆発的に売れるとかして作者を食わせてやれればいいんすけど」

「ん!?」

「あぁでも、結局書くのは作者だから、
俺が食わせたことにはなんないっすね」

「本当に情が深いな!?」

「何すか、いきなり。うるせえんすわ」

「そんなこと思ってくれてたの?」

「もちろんその気持ちはありますよ」


岬は当たり前のように続けます。




「言っときますけど、
これはばあちゃんにそろそろお年玉返したいって気持ちと同じ類っすからね」

「ずっとばあちゃんじゃん」


ばあちゃん扱いは揺るぎませんが、
あたたかい気持ちになりました。


それでは、また。

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松月(ショウゲツ)
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