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2023.12.05 読売新聞に対して「公開質問状(2)」を送付しました。

下記にあるように、公開質問状に対して読売新聞社から回答がありました。

この回答は、我々が報道に抱いていた疑問である、「消費者に納税義務があり、事業者が消費税を消費者から預かって消費者の代わりに納税していることを前提としている解説ではないのか」という点について、その指摘はあたらないと述べています。そしてその根拠として、東京地裁判決や金子俊平政務官の、我々が指摘した別の部分を引用されていました。

しかし、その解釈は根本的な誤りがあると当会は考えています。その点を指摘すると共に、下記2点について再質問いたしました。

(問1)「国庫に入るはずの消費税の一部が免税事業者の手元に残る『益税』」とは、誰が誰に対して支払った、どのような金銭のことなのでしょうか。

(問2)免税事業者に「益税」があると信じた方から、免税事業者が誹謗中傷を受けていることをご存じでしょうか。また、結果的に貴社の記事がこうした誹謗中傷を助長する可能性がある点について、どのようにお考えでしょうか。

「「益税」とは何か」
これは記事の重要な要素であり、また誹謗中傷の大本となっている考えです。この点をどうお考えなのか、明確に示していただきたいと考えております。

如何に、「公開質問状(2)」の全文を記載いたします。
ご興味があれば、是非全文をお読みください。

株式会社読売新聞グループ本社
代表取締役社長 山口 寿一 殿
読売新聞グループ本社広報部 殿

2023(令和5)年12月5日
公開質問状(2)
インボイス制度の中止を求める税理士の会
インボイス制度に反対する司法書士の有志の会

1.はじめに

この度は当会からの2023年10月10日付で提出した「公開質問状」に対し、内容を精査したうえで、ご回答いただきました。その誠実な対応に、感謝申し上げます。

 貴社からの回答に対する当会の意見は下記の通りです。

(1)消費税は消費者が負担しているか否か、という点について
 貴社からは、「「消費者に納税義務があり、事業者が消費税を消費者から預かって消費者の代わりに納税している」という趣旨の記述はしておりません」とご回答頂きました。
 そして記事において「これまでは年間売上高が1000万円以下であれば、受け取った消費税額分を納める必要がない免税事業者としていた」「国庫に入るはずの消費税の一部が免税事業者の手元に残る「益税」も一定程度解消される」と表現した根拠を、平成2年3月26日東京地裁判決(以下「東京地裁判決」と言う。)の「消費税を実質的に負担しているのは消費者である」という点と、金子俊平財務大臣政務官の2023年2月10日答弁(以下「金子氏答弁」と言う。)の「消費税は、消費税分が売上時に対価に含まれて、納税されるまでは事業者のもとにとどまることから、預り金的性格を有するものである」と言う点に求めています。しかし、その見解には疑問があります。
 消費税法などによれば、免税・課税にかかわらず、事業者が受け取った金銭は、全て物品や役務の提供に対する対価であり、消費税という金員を事業者が受け取ることはありません。これは、課税事業者は、領収書への消費税記載の有無にかかわらず、当該売上が消費税額算定の基礎とされ、消費税を納税する義務を負うことからも明らかです。
この点は、東京地裁判決で、「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しない」と述べていますし、金子氏答弁の「事業者が売上げに係る税額から仕入れに係る税額を控除して納税するという仕組み」という答弁からも読み取ることが出来ます。

 また、貴社は回答において金子氏答弁の、「消費税は、消費税分が売上時に対価に含まれて、納税されるまでは事業者のもとにとどまることから、預り金的性格を有するものである」という点を、記事の根拠とされています。しかしこれは、取引時の消費税相当額を納税時まで事業者が保管しているという意味ではありません。経費等を差し引いた当該会計年度の売上の一部が手元に残っているはずであり、その資金を用いて消費税を納税するということを観念的に述べているに過ぎません。その意味では、法人税も売上時に対価に含まれており、納税されるまでは事業者のもとにとどまるので「法人税も預り金的性格を有する税である」ということができます。当然のことながら、免税事業者が国庫に入るはずの消費税を手元に残しているという意味でもありません。

 貴社は回答において、東京地裁判決の「もっとも、消費税の実質的負担者が消費者であることは争いのないところであるから、右義務(消費者の納税義務および事業者の徴収義務)がないとしても、消費税分として得た金員は、原則として国庫に全て納付されることが望ましいことは否定できない」という点を引用しています。
 しかし、事業者のすべての支出の原資は消費者から受領する売上であり、消費者が負担しているのは当然のことです。消費者は、消費税はおろか法人税も人件費も水道光熱費もすべての事業者の支払いを実質的に負担しています。この点について争うことは無意味です。
また、この一文は、仕入税額控除制度について述べる導入部分としての記載であり、法的な意味はなく、単なる理念を述べているにすぎません。加えて、この一文の後は、「仕入税額控除制度は、事業者が行う仕入れにつき仕入れ先が免税業者であるか如何を問わず一律に仕入れ額の一〇三分の三を税額控除することを認めているが、免税業者からの仕入れには消費税相当額は上乗せされないから、一部に過剰控除が生じることになる」(下線筆者)に繋がっています。つまり、同判決は、免税業者からの仕入れには、消費税相当額が転嫁されていないことが前提となっています。従って、記事中の表現である、「受け取った消費税額分」「国庫に入るはずの消費税」「本来納めるはずの3000円」などを、同判決を根拠とするのは間違っています。

 いままで述べてきたように、貴社が根拠とされてきたものは、貴社の記事の根拠とならないのです。

 それでは何故、貴社の記事において「国庫に入るはずの消費税の一部が免税事業者の手元に残る『益税』」「本来納めるはずの3000円」などの表現をしたのでしょうか。

 その理由としては、貴社が「通常の取引では、事業者が消費者に対して消費税を本体価格とは別に請求しており、事業者は消費税を消費者から預かって消費者の代わりに納税している。しかし免税事業者は、消費税を消費者に請求し、受領しているにもかかわらず納税していない」という前提で記事を書いていると考えられます。また、仮に貴社の記事がこのような趣旨でなかったとしても、この記事を読む読者は、「益税」の意味を、「消費者が事業者に支払った消費税の一部」だと受け止めてしまいます。

 では、記事中の「益税」と表現されている金銭とは、いったい何なのでしょうか。
 「消費税が預り金ではない」「事業者が消費者から受け取る消費税相当分は物品や役務の対価の一部に過ぎない」という財務省の解釈や裁判例を正しいとすれば、「国庫に入るはずの消費税の一部が免税事業者の手元に残る『益税』」とは、誰が誰に対して支払った、どのような金銭のことなのかお答え頂けますでしょうか。またそれは、通常の判断能力を有する一般人の理解において読み取ることは可能なのでしょうか。

(2)「益税」という表現について
 さて、どうして貴社は、存在しない「益税」があると考えたのでしょうか。もしかしたら、課税事業者の仕入税額控除がされているから、免税事業者は全て消費税分をもらっているとお考えになったのかもしれません。しかし、そのようなことは常識的に考えられませんし、そもそも事業者間で取引される金銭はすべて物品や役務の対価にすぎません。
 また、消費税相当額の「便乗値上げ」のことを、「益税」という表現をしたのかもしれません。実際に消費税導入時には、「便乗値上げ」は問題になりました。また、東京地裁判決でにも、「同法一一条一項が、消費税を「適正に転嫁するものとする」と規定していることに鑑みると、事業者免税点制度の適用を受ける免税業者は、原則として消費者に三パーセント全部の消費税分を上乗せした額での対価の決定をしてはならないものと解される。したがって、消費税施行にともない、いわゆる便乗値上げが生じることはあり得るとしても」と、「便乗値上げ」への言及もあります。しかしながら、これは「便乗値上げ」と称すべきであり、「益税」と称すべきではありません。
この表現の違いは思いのほか大きいのです。「便乗値上げ」という表現であれば、便乗値上げをしている特定の事業者のみの問題となります。しかし「益税」という表現は、全ての免税事業者が不正な利益を得ているという印象を与えてしまいます。
 ところが、貴社は、消費税法にも、実社会にも「益税」は存在しないにもかかわらず、すべての免税事業者が「益税」という不当な利益を得ているという印象を読者に与える記事を掲載しました。貴社のような記事を信じた方から、免税事業者が、「本来は納めるべき消費税を着服している」「本来納めるべき税金をポッケナイナイしてズルイ!」などと、誹謗中傷を受けていることをご存じでしょうか。また、結果的に御社の記事がこうした誹謗中傷を助長する可能性がある点について、どのようにお考えでしょうか。

2.質問項目
改めて次の2点について伺います。

(問1)「国庫に入るはずの消費税の一部が免税事業者の手元に残る『益税』」とは、誰が誰に対して支払った、どのような金銭のことなのでしょうか。

(問2)免税事業者に「益税」があると信じた方から、免税事業者が誹謗中傷を受けていることをご存じでしょうか。また、結果的に貴社の記事がこうした誹謗中傷を助長する可能性がある点について、どのようにお考えでしょうか。

以上の点につき、改めて再質問させていただきますので、ご多忙の折に恐縮ですが、ご回答をよろしくお願いいたします。なお、回答期限は12月22日(金)17時までに、info@tnk-tax.or.jpまでお願いいたします。

以上

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