マガジンのカバー画像

ものがたり。 童話的なものを、徒然なるままに。

3
創作がしたかったのです。ただ、それだけなのです。ただ、それだけ。 写真:John-Morgan
運営しているクリエイター

2018年12月の記事一覧

雨よ、憂ひ纏ひて。❷

雨よ、憂ひ纏ひて。❷

曾祖父様の遷都政策の功罪は、様々だ。ただ、御爺様の不幸という点に話を絞って言うならば、遷都によって地の利の力をそがれた貴族たちを作ったことは、その罪と言える。
地の利の力をそがれて力を失っていった貴族たち。地の利がなければ貴族としての権勢も築いていけぬ、立ち回りのできぬような貴族とも言えぬような、貴いと言われるような力もない者達だ。だが、力ない貴族であったればこそ、分かり易く力を持っていた御爺様に

もっとみる
雨よ、憂ひ纏ひて。

雨よ、憂ひ纏ひて。

この世の春は移ろいやすい。他人の欲の絡むところはなおのこと。自らの思いのままに人の心を操り、もてあそぶ。あまつさえ人の命すら、自らの欲のためにほしいままにする。人の命も心も、かように儚く美しいものであるのに。

彼の方にお会いしたのは、ほんの気まぐれ。

お目にかかるつもりなど毛頭なかった。

そう、ただの気まぐれ。
あるいは、気の迷い。
ほんの少し、浮世に飽きてしまっていたのかもしれない。
何故

もっとみる