雨よ、憂ひ纏ひて。
この世の春は移ろいやすい。他人の欲の絡むところはなおのこと。自らの思いのままに人の心を操り、もてあそぶ。あまつさえ人の命すら、自らの欲のためにほしいままにする。人の命も心も、かように儚く美しいものであるのに。
彼の方にお会いしたのは、ほんの気まぐれ。
お目にかかるつもりなど毛頭なかった。
そう、ただの気まぐれ。
あるいは、気の迷い。
ほんの少し、浮世に飽きてしまっていたのかもしれない。
何故この世にこの身をゆだねるのか、なぜ揺蕩うのか。
世界の美しさも儚さも、眼前を曇らすことのみで、倦んでいたのかもしれない。
この身に流れる青い血は、どこまでも私を権勢の世に無関係ではいさせてくれない。誰も彼もが権力に血眼になるわけでもあるまいに。
いつだって、巻き込まれる。この血のおかげで幸せであると思ったことなど一度とてないのに。
御爺様も父上も、幸せとは何かを考えてしまうような生を歩んでおられた。
成長するための某かにに使わせていただきます。