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少女漫画にこんにちは

どうやら僕はカワイイが好きみたいだ。

そう自覚したのは約半年前、弥生美術館でやっている水森亜土展で作品を見たときであった。

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落語家という職業柄、おじいちゃんに会うことが一番多く、特に修行中はカワイイに触れる機会は皆無。「師匠粋ですね」ということはあっても「師匠カワイイですね」という機会はまず無かった。

水森亜土展以降は、そういう展示に対して前よりも敏感になった。特に水森亜土展をやっていた弥生美術館は、挿絵・雑誌・漫画・付録などの出版美術をテーマにやっているらしく、ちょいちょいチェックはしていたのだ。

そして今回気になる展示があった。
田淵由美子展だ。

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僕は基本的に前情報なく行くのだが、展示に来てはじめて田淵由美子という人が少女漫画家だということを知った。
ざっくり言えば、1970年代後半の「おとめちっく」作品ブームを牽引した漫画家だそうだ。その年代の女性からすれば、とても懐かしいのかもしれない。少女漫画にはほとんど縁のない僕なのだが、これがとても素晴らしかった。

展示では、それぞれの作品の原画が展示されている。一作品につきだいたい3,4ページなのだが、このわずか数ページで物語に引き込む吸引力があるのだ。
様々なカワイイ、また女性の憧れがつまりにつまっている。まず、題名から引き込まれる。

「夏からの手紙」

「聖夜、粉雪がふりしきる」

「やさしい香りのする秋に」


なんだが読みたくなるものばかりで、物語を想像させる。

物語をみていけば‥
コンプレックスを抱えたメガネをかけた女の子。好きな人のためにメガネを外しキレイに変身するのだが、好きな人はそのことに気がつかない。
「このバカ!」と言って主人公が走り去る。
横にいた友達が、
「本当に女心がわかんないやつね」

よく見る設定だが、これがたまらない。

また、『マルメロ・ジャムをひとすくい』での台詞がたまらない。
お店で好きな男セインに話しかけようとするアリス。結局話しかけられずにお店を出た時の後悔の台詞がこちら。

「ばかね はりきったりして‥
セインのとりまきはビューティフルの形容詞がぴったりなすてきな人ばかりなのに」

このビューティフルの形容詞がぴったりな、これがたまらない。そんな台詞が要所要所に出てくるのだ。

田淵由美子の作品は、女性の淡い恋・憧れや理想、そこにすれ違いであったり、誤解、様々なものがつまっており、言ってしまえばベタと言われるものだし、こんな女実際に付き合ったら大変だろうなとか、そりゃツッコミどころはたくさんある。あるのだが、


そんなことは、どうだっていいのだ。


嘘ばかりの世界だが、田淵由美子が描くことによって全てがリアルになる。この登場人物は確かにここに存在するし、画の力で非現実の世界に一気に飛ぶことができるのだ。

まあ読みすぎると人によっては胸やけしてしまうかもしれない。だが、こんなトキメキが少ないこんなご時世、胸やけするくらいがちょうどいいかもしれない。

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