日記:その日暮らしが掴んだ藁

 私はベーシックインカムを待ち望んでいる。

 アルバイトはしているけれど、とりたてて優秀なわけでなく、従って賃金も勤務時間もミニマム。 当然貰えるお金も5万円代で、ここから月々のカードの引き落としと積立を引けば手元に残るのは3万円。 さらに5千円ずつ貯金と奨学金返済に当てて2万円。 コンタクトレンズや化粧水など消耗品を買うと後残るのは数千円。 衣食住は家族の世話になっていて、残金がそれでも野垂れ死にの心配はないものの、少し寂しい。

 そんな状況で、7千円でも7万円でも70万円でも、働かずしてお金が定期的に貰えるとなればどうなる。 7千円なら奨学金返済に回す額を1万円に増やし、さらに本が買える。 7万円ならさらに返済額を3万円にして新しく服だの余分な化粧品だの買って楽しめる。 どんだけ貧しいんだと笑わないで欲しい。 私にとっては、少額でも働かずしてお金が貰えれば劇的に世界が変わるのだ。

 ベーシックインカムが始動する代わりに年金や生活保護などの社会保障制度が崩されてしまうことを危惧する声があるのは知っているし、その心配は痛い程分かるつもりでいる。 ただ、年金や生活保護のお世話になれないところであっぷあっぷしているその日暮らしの私にとって、あってないような制度よりあれば取り巻く世界が良くなってくれる制度の方がどうしても魅力的に映ってしまう。 溺れる者が掴んだ藁だ。

 自分の事ばかりで別の所で不安にかられている人の事を考えられないところ、私はまだ精神が未熟である。 衣食足りず、礼節を知らない。 足りなくても、理性を売りにする人間という種族を名乗りたいならば、礼節を忘れてはいけないのにだ。

 ベーシックインカムも社会保障も、人間の礼節を守ってくれるよい制度だと思う。 その2つが両立する社会、それが難しいならせめてどちらのお世話になるか個々人で選択出来る未来が来てほしいと願う給料日である。

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