日記:若い人向けのエンディングノート

 死ぬつもりも予定もないけれど、遺書を書いておきたいと思うようになった。

 世の中も自分も、明日どうなるか断言は出来ない。 5分後いきなり私の頭上に直径50センチの流れ星が落ちてくるかもしれないし、晩秋に職を失ってまだ次に就けていない問題ありの生き物として、今日の夜にでも連れていかれトラックの荷台に乗せられる可能性もゼロではない。 ガンや脳卒中のリスクというと、確率はもう少し高くなるだろう。

 そんな風にもしも死んだとして、こんな私にも色々残していかざるを得ないものがある。 Twitterやここのアカウント、趣味で買った大量のゲームや本、アニメのグッズ。 それについて家族にちゃんとメッセージを残しておかないと、私の意に沿うような幕引きは望めないだろう。

 それはそうと、就活のままならなさにむしゃくしゃしてマグロ丼が食べたくなり、近所のスーパーにマグロの赤身を買いに出かけた。 ついでに本屋を覗くと、エンディングノートが数種置いてあった。 ちょっと手に取ったが、私より高齢でしっかり家族や資産をもうけた方のための項目が多かったので棚に戻した。

 鮮魚売り場に向かいながら、ふと思った。 もう少し若い人用のエンディングノートってないのかな、と。 部屋の整理は同じジャンルが好きなこの人にお願いしたいとか、Twitterのフォロワーさんたちへのご挨拶の文面はこうしたいとか、出棺の時にはこのアニソンをかけてほしいとか。 そんなのを書けるノート。

 やはり作ろうとしたら怒られるのだろうか。 自殺を助長する! とかなんとかで。 でも助長なんかしなくったって毎日どこかで誰かが首を吊ったりオーバードーズしたり煉炭を燃やして亡くなっているのだ。 そこが変わらないのなら、せめて死んだらこうしてほしいって言い残す手段ぐらいあったっていいと思うのだ。

 大きなボックスにいっぱい入ったバニラアイスを買いそうになるのを堪えて、スーパーカップバニラを2つとる。 遺書に、『溶けないよう短時間でいいから、霊前にアイスクリームを供えてくれ』と書きたそうかな、なんて思いながら、日記を締めくくらせていただく。

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