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#26『"笑わせないでよ"SHISHAMO「きっとあの漫画のせい」を語る』

今回は2017年2月22日にリリースされた4thアルバムSHISHAMO4の7曲目に収録されている「きっとあの漫画のせい」という曲について語っていきます。

この曲は簡単に説明すると、”失恋した女の子の心情”がテーマに描かれています。また、タイトルにもあるように”漫画”がこの曲にキーポイントになっています。残念ながらMVはありませんが、YouTubeにて音源がありますので載せておきます。

それでは歌詞や曲について語っていきます。

一番Aメロの歌詞

もうなにもしたくなくなった
気力が全部溶け出した
汗水流して働くのも
満員電車に乗るのも

「きっとあの漫画のせい」作詞:宮崎朝子

出だしから何かあったんだなということがわかるフレーズですよね。曲調と歌い方からちょっと怒りに満ちていることが伝わってきます。「汗水流して働くのも 満員電車に乗るのも」と歌っているのがなんだか共感してしまいます。しんどくてもなんとか頑張れていたことも、ある一つの出来事がきっかけで日常の全てを投げ出したくなってしまうことってありますよね。主人公に一体何があったのでしょうか。

一番Bメロの歌詞

もうなにもしたくなくなった
全部突然嫌になった
なんだか今時の若い娘っぽいだなんて
我ながらに思いながら
この前借りた漫画を読む
こんなに気持ちが落ち込むのは
別に、君が煮え切らないからじゃない
うぬぼれないでよ

「きっとあの漫画のせい」作詞:宮崎朝子

全部突然嫌になってしまった自分のことを「なんだか今時の若い娘っぽい」と当時20代前半のSHISHAMOが歌っているのが斬新で面白いななんて思います。普通「今時の若い子は」って年齢の高い人が若い子に向かって言う言葉ですよね(笑)。

そして「この前借りた漫画を読む こんなに気持ちが落ち込むのは 別に、君が煮え切らないからじゃない うぬぼれないでよ」という毒気のあるフレーズが出てきます。

詳しくは明かされていませんが、おそらく主人公の女の子は付き合っていた男性にひどい振られた方をされたのではないかと推測されます。借りてきた漫画の内容が失恋した自分と重なって気持ちが落ち込んでしまったということが読み取れます。でも、落ち込んでしまうのは彼のせいだと認めることが嫌で主人公の女の子は「うぬぼれないでよ」という強い言葉で落ち込む気持ちを振り払おうしているという展開ですね。

一番サビの歌詞

きっとあの漫画のせいだな
サブカル女子が好きそうな短編集
きっとあの漫画のせいだな
今夜は嫌な夢を見そうだから
目はつむらないよ

「きっとあの漫画のせい」作詞:宮崎朝子

「きっとあの漫画のせいだな」と気分が落ち込むのは彼のせいではなく借りてきた漫画のせいなんだと主張している主人公の女の子が描かれていますね。

その後のフレーズで出てくる「サブカル女子」というのは一体どんな女子なのか気になったので調べてみたら、まず”サブカル”とは”サブカルチャー”の略語だそうです。サブカルチャーとはマニアックな文化や娯楽のことを表しているそうで、一般の女性が普通ハマらないような趣味を持った女性のことを「サブカル女子」と呼んでいるそうです。

つまり「サブカル女子が好きそうな短編集」というのは世間一般にあまり浸透はしていないが、一部の人は知っているような漫画だということになりますね。でも、無意識的にそういう漫画(失恋物語)を思わず手に取ってしまっていたというのが同じ状況の何かにすがりたい共感したいという主人公の本心が見え隠れしているように思えます。

「今夜は嫌な夢を見そうだから 目はつむらないよ」というフレーズ。嫌な夢を見てしまいそうなくらい、本当は傷ついてるんですよね。

Cメロの歌詞

今も私があなたを想って泣いてるなんて思うの?
笑わせないでよ

「きっとあの漫画のせい」作詞:宮崎朝子

そして、この曲最大の山場「笑わせないでよ」。ストレートに感情をむき出しにしているのがいかにも女の怒りという感じがしますよね。

そして何より「笑わせないでよ」のところを笑いながら歌っているのがポイントなんですよね。ライブで聴くと毎回鳥肌立ちます。YouTubeにてそこのライブ映像がショートでアップされているので載せておきます。

最後のサビの歌詞

きっとあの漫画のせいだな
サブカル女子が好きそうな短編集
きっとあの漫画のせいだな
今夜は嫌な夢を見そうだから

あなたにされたひどいこと
そんなの全部忘れたわ
あなたに言われたひどいこと
そんなの全部忘れたわ
だけど涙が止まらないのは
あの漫画の女の子が 惨めで可哀想だから
私に似て可哀想だから

「きっとあの漫画のせい」作詞:宮崎朝子

「あなたにされたひどいこと そんなの全部忘れたわ」というフレーズ。ここを二回繰り返すのが忘れたくても本当は全然忘れることなんかできないということが伝わってきて胸が痛くなるんですよね。

そして、漫画の女の子と自分を重ね合わせて涙が止まらなくなるという展開で終わります。やはり強がっていても自分の気持ちに嘘はつけないものですよね。最後に「可哀想だから」の後に”あーあーー”と歌うのですがそこもなんともまた泣き叫んでいるかのようで苦しい気持ちにさせられます。

まとめ

ひどい振られ方を経験した女の子に刺さる一曲ですよね。やっぱり「笑わせないでよ」というフレーズが秀逸で女の子にひどいことを散々してきた男に一言物申したいと言わんばかりのいかにも宮崎朝子らしい一曲だなと思います。

また、失恋した自分と漫画の主人公を重ねてしまうという描写も上手いなと思います。この曲の場合は漫画でしたが、誰しも落ち込んだりした時にふと聴いた音楽や読んだ本、観た映画などにひどく共感してしまうことってありますよね。

そして、この曲は二番がなくて3分47秒とSHISHAMOの中でも短い楽曲なんですよね。そこが個人的にいいなと思っていて、歌詞の内容で「全部突然嫌になった」とあるように衝動的な感情がこの曲のテーマだと思うんですよね。だから変にダラダラせず出だしのイントロからバキバキの演奏で始まって勢いよく最後までスパッと終わっていくのが歌詞の内容と合っていてこれもまた秀逸だな思います。

実はこの曲なんですけど、ファンの間で人気曲となっています。というのは、2018年6月9日にNHK総合テレビにて、「シブヤノオトPresents SHISHAMO リクエスト LIVE」が放送されました。言わば当時発表されていた59曲からファンがリクエスト投票する企画です。今回取り上げた”きっとあの漫画のせい”が第2位に選ばれたんですよね。やっぱり宮崎朝子の「笑わせないでよ」がみんな好きで聴きたいということですよね。

是非聴いてみて下さい。


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