人を夢中にさせる「驚きのデザイン」とは?


SYNTプログラマーの井上です。

最近は『「ついやってしまう」体験のつくりかた』という本を読んでいます。

ゲームを題材に人の心を動かす「体験デザイン」について学べる本です。

今回は本書に記されている「体験デザイン」の中で「驚きのデザイン」というものを紹介します。


ゲームの中には長時間やることが前提のゲームが多くあります。


昔はゲーム機自体の性能の問題もあって、単純なゲームしか作ることはできませんでした。これらのゲームはそこまで長時間のプレイを必要としていません。

ゲーム機の進化によって、より質の高いコンテンツを提供することができるようになった反面、ゲームのシステムやルールは複雑化していきました。

それに従い、クリアまでに必要なプレイ時間も増えていったのです。


RPG(ロールプレイングゲーム)は、まさにそのような長時間のプレイが前提のゲームの一つでした。


そんなRPGの中で最も有名なゲームの一つが『ドラゴンクエスト』です。


ドラクエは社会現象になるほどのブームを巻き起こしたゲームでした。今でもシリーズは継続しています。




プレイ時間の延長にとって、最大の壁となるのは「飽き」と「疲れ」です。


ドラゴンクエストは見事にこれを解決しました。クリアまでに少なくとも20時間~30時間は必要なゲームなのですが、眠気も忘れてプレイしたというユーザーが続出したのです。

眠気を忘れさせてしまうぐらいのおもしろいゲームとは、疲れと飽きを感じさせないゲームです。

ドラクエはどうやって眠気を忘れさせてしまうほど、長時間、プレイヤーを夢中にさせたのでしょうか?


そのキーワードは『変化』です。



ゲームに限らず、私たちは、変化がない生活には耐えられません。

変化こそが私たちの元気の源の一つであり、疲れや飽きを忘れさせるものです。


その変化を生み出すためのデザインこそが冒頭で提示した「驚きのデザイン」です。



驚きのデザインは、下の3つのキーワードによって説明されます。


それは


①誤解

②試行

③驚愕

です。


まず、ユーザーに誤った仮説を立てさせます。これが①誤解です。


次にその誤った仮説に基づいて、ユーザーは行動を起こします。これが②試行です。
このときユーザーはまだその仮説が誤っているとは気づいていません。


最後に、ユーザーは仮説・試行が間違いだったと気づき驚きます。これが③驚愕です。


ポイントは、ユーザーが誤った仮説を立てるかどうかにあります。

そのためには、事前に誤った仮説を誘導できるように緻密に世界観を構築する必要があります。


前提への思い込みを覆すような、ふとした『驚き』が疲れや飽きをふっとばすというのです。


言葉では簡単に説明できても実際に組み立てるのは非常に大変です。

驚きが有効になるためには、ユーザーがちゃんと誤解してくれるような前提となる世界観が構築されていないといけません。

そして、同じ驚きは二度目は通用しません。


長時間のゲームだと、疲れや飽きを吹き飛したいポイントは、何度も登場しますし、驚きのデザインを多用することになります。



では、どうやって驚きのデザインをよりコンパクトに実現させるのでしょうか?


それは、「タブーのモチーフ」を利用することです。



「タブーのモチーフ」とは、私たちが抱いている日常への思い込みを利用しようとするものです。

日常への思い込み、即ちタブー、をゲーム中であえて破ることによって驚きをデザインしようとする試みです。


わざわざ、ゲームの中で前提を作って覆させる必要がないので、よりコンパクトに驚きを与えることができます。


本の中では、タブーのモチーフとして10個のモチーフが紹介されていました。


その中でも、特に興味深かったのは「本能欲求のモチーフ」です。



具体的には性、損得、承認、食のモチーフなどがあります。

これらのモチーフの特徴は、「人間が本能的に欲してしまうもの」を利用することにあります。


本能的な欲求を刺激することで、冷静さをかき乱し、疲れや飽きを和ませる、というものです。



例えば「性のモチーフ」は色んなゲームに取り入られています。

シリアスな展開の中に、恋愛要素などが入ったりすると、脇道だと分かっていても夢中になってしまいます。

ドラゴンクエストでも、本能的欲求を利用した「タブーのモチーフ」が使用されています。


それは「カジノ」です。


お金が欲しいという欲求と賭け事というタブーを利用した、まさにタブーのモチーフそのものです。

シリアスな物語に疲れたプレイヤーはカジノに夢中になります。

物語のテーマからは大きく逸れているにも関わらず、ドラゴンクエストシリーズでは必要不可欠なほどの人気コンテンツになってしまいました。





疲れや飽きを吹き飛ばし、私たちが夢中になるためのキーワードは「変化」です。

そして、人の感情に変化をもたらすのは「驚き」であるということでした。

この「驚きのデザイン」は日常でも取り入れられる考え方ではないでしょうか?



継続にとってに飽きと疲れは天敵です。


飽きと疲れを払拭するために、あえて、タブーを冒してみる、というのは

例えば勉強であれば普段しないような場所でしてみるというのはとても有効な方法です。

日常の繰り返しで疲れている人は、意識して「変化」を取り入れてみるといいかもしれません!


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