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在留外国人の生活保護は認めないと東京高裁が控訴棄却:日本人の「われわれ」の範囲は狭い!?

 是非、この記事を読んでほしいです。日本の排外的性格、非寛容性、残酷さが如実に表れていると思います。


1.控訴棄却の経緯

 ジョンソンさんは2015年に日本へ来て、2019年に重度の腎不全を患いました。その結果、療養を目的とした「特定活動」の在留資格に変更され、就労が禁止されたため、2021年に千葉市に生活保護を申請しましたが、申請は却下されていました。

 外国籍であることを理由に千葉市が生活保護申請を却下したのは違法だとして、同市に住むガーナ国籍のシアウ・ジョンソン・クワクさん(34)が生活保護法に基づく保護の開始を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は6日、外国人を生活保護の対象外とした一審千葉地裁判決を支持し、ジョンソンさんの控訴を棄却した。(加藤豊大)

2024.08.06 東京新聞 TOKYO Web

2.判決理由 

松井英隆裁判長は、判決の理由を次のように述べています。

政治的判断により、限られた財源のもとで自国民を在留外国人より優先的に扱うことは許容される」
「生活保護法が特定の外国人に適用される根拠は存在しない
「外国人を公的扶助の対象とするかどうかは立法府の広範な裁量に任されている」

2024.08.06 東京新聞 TOKYO Web 強調は祐川

 これは、在留外国人を生活保護法の適用外とする最高裁の判例に従ったものだということです。

3.判決は難民条約と矛盾する

 この判決に対して、奥貫妃文おくぬきひふみ(昭和女子大教授・社会保障法)さんは、次のように批判しています。

「他国と比べ、生活保護法に国籍の線引きがある日本はかなり特殊だ。日本が批准し、社会保障における国民と在留外国人の平等をうたう難民条約とも矛盾する」

2024.08.06 東京新聞 TOKYO Web

 現在、ジョンソンさんは週に3回の人工透析を必要としており、医療や社会保障が不十分な母国へは帰国できません。 

4.「われわれ」の範囲の拡大 

 この判決で明らかになったことは、日本人は在留外国人を自分たちの仲間、「われわれ」の範囲に含めていないということでしょう。在留外国人は「やつら」なのです。
 この日本人の「われわれ」の範囲は非常に狭いのです。つまり日本人は排他性が強く、在留外国人を非‐人間化し、基本的人権、公的扶助を受ける権利、人間としての尊厳を認めることができないのです。
 これは、たぶん、大日本帝国時代から続く日本人の傾向かもしれません。

 日本は外国人技能実習制度や特定技能制度を通じて労働力を受け入れています。また、インバウンド、つまり観光客が日本を訪れて経済に貢献することも望まれています。
 多様性、国際協力、国際貢献、共生といった言葉がしばしば使われますが、これらは自己中心的な目的を隠すためのものかもしれません。

 判決によれば、政治的判断が変化して立法府が在留外国人にも生活保護等の公的扶助の対象にすると決めれば、ジョンソンさんも生活保護を受けることができるといことです。

 ジョンソンさんに寄り添い、日本人の「われわれ」の範囲を拡大し、残酷な今の政治的判断を変え、国会で生活保護法の改正に取組むように働きかけていくことが、日本人に求められているのではないでしょうか。


「われわれ」の範囲の拡大については以下のnoteもご参照願います。


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