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70歳を過ぎても働け!

 このBloombergの記事は他人事ではなく、まさに自分のこととして受止めざるを得ません。
 日本人男性70~74才の働いている割合が2023年で43.3%にもなっているといいます。20年前は29.8%だったといいますから、14.5%も上昇しています。またOECDの平均は17.3%だといいますから、先進諸国の2.5倍にもなります。 

  65歳~74歳未満だと51.8%もの男性が働いています。G7では断トツ(断然トップ)です。

横山恵利香 2024.09,05 Bloomberg

 なぜ、高齢者になっても働くのか?

 高齢労働者の半数近くが仕事をする主な理由として金銭面以外の要因を挙げた。「自身の能力を生かせる」や「働くのは体に良い」といった回答もあった。

横山恵利香 2024.09,05 Bloomberg

 確かに、お金じゃないと言う人もいるでしょう。
 しかし、会社人間、社畜である男性の場合、趣味も無ければ地域社会との繋がりもなく、暇を持て余すくらいなら働こうと思うかもしれません。
 空虚放置されるくらいなら働くということではないでしょうか?私も無趣味で地域社会との繋がりが無いので・・・


 空虚放置については、以下のnoteをご参照願います。


 しかし、もっとも大きな問題は年金だけでは生きてはいけない、ということなのではないでしょうか。
 この記事にあるように、経済協力開発機構(OECD)によると、歴史的な物価高が始まる前でさえ、日本では65歳以上の国民の約5人に1人が貧困状態だったといいます。

 厚生年金保険の平均は月14万4982円です。米社会保障庁(SSA)のウェブサイトによると、2024年1月時点の米国での平均年金支給額は推定1907ドル(27万4000円)だったといいますから、米国の約半分にしかなりません。日本は、年金だけでは暮らしていけない国です。

 さらに、定年を迎えた女性が直面する状況は特に厳しいものがあるようです。東京都立大学の阿部彩教授によると、高齢で独身の女性の相対的貧困率は44%にも達しています。絶句です。

 2024年の男性の平均寿命は81歳ですから、75歳まで働いて働いてボロボロになって、あと6年間は要介護状態になってしまい、それでも自立しろと責められ続け、社会のお荷物だと言われながら死んでいく。
 そんなシナリオが現実になっているのです。

 私たちは、このような日本の状況、日本の政治に異議を申し立てなければなりません。

 私は岡野八代(政治学者)さんの次の指摘は、公正な社会構想に向けて、とても大切なことだと思います。

 社会を構成するあらゆる者の利益や恩恵、義務や負担の公正な配分を考えるさい、人間にとっては不可避である依存をめぐる問題が、なぜ不在なのか。

 依存者を放置し必要なケアを与えない社会や、依存者をケアする人びとの労働を搾取し社会的便益へのアクセスを奪う社会、ケア労働に対して不当な扱いをすることによって依存者へのケアが賄われている社会は、不正な社会である・・・

岡野八代 2024『ケアの倫理 フェミニズムの政治思想』岩波新書 p193,194 Kindle版

 人間はそもそも、この世に生を受けたときは完全な依存状態です。生まれたばかりの子どもを放置していては人類は滅亡してしまいます。
 そして、人生を終える時も多くのひとは依存状態となるのです。
 人生のα(アルファ)とΩ(オメガ)は依存状態なのです。

 新自由主義的な考えが蔓延はびこり、「働けない高齢者、自立できない高齢者は社会の害虫」だと生産性基準でレッテルを貼り、世代間の闘争が声高に叫ばれる昨今。
 人間に不可避な依存状態を無視した社会、社会構想、言説には人間の現実を無視したもの、不正な社会でしかありません。


 次のnoteもご笑覧願います。





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