「塔」2017年7月号(月詠)
箱買ひの林檎のうちに凄まじく我のつよき一個腐りてゐたり
平成と同い年なればわれよりも先に去りゆくもののさびしゑ
冗談ぢやない、と短く遮ればしばし間を置きて返信は来る
毛嫌ひの果てに未だに食はざりし物あり 例へばむらさきのガム
夭折のゆめより醒めて図書室の夕闇として杉山隆
まつたくの素人として生きてゐる 未経験から人間になる
給料日前に家賃を払ひ終へすつからかんの身にて眠りぬ
踏切を過ぎて電車は風を生む 舞ひあがりたる春のはなびら
(p.116)
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