『魔道祖師』の「忘羨」三曲のこと
何度か書いていますが、
もともと私は、横笛について調べていて、
偶然に『陳情令』の「忘羨」を、何度か検索でヒットさせ、その旋律に惹かれたことが、
『魔道祖師』にハマるきっかけでした。
最初に「忘羨」という曲を知った時には、まだなんのテーマ曲かも、
『陳情令』『魔道祖師』のストーリーも知らず、
ごく自然に、曲のイメージのみが浮かんでいました。
最初は、篠笛奏者の笛だったんです。
Spoonで配信していて、とても綺麗で。
その後、YouTubeで検索し、
『陳情令』の写真の“雲深不知処”を撮影した風景の、仙郷そのもののような、切り立った山とたぎつ水の光景の中、
古琴と笛子を中心として奏でられている、
その壮大なイメージに惹かれました。
ゆるやかで、穏やかなようでいて、激動も感じさせ、
異世界的であり、古典的でもある、美しい旋律。
私だったら、奥吉野の山の中で、響かせてみたい…
最初は、私自身が、創作琴を弾き歌う活動をしていたため、
即興演奏のできる、笛吹きさんを探す過程で、
横笛について調べていたんです。
でも結局、この検索をきっかけに、自分も横笛はやっていたため、自分が吹きたくなって、
(能管では既存曲が吹けないので)改めて篠笛、笛子などを調べるうち、
偶然に“チベットの横笛”を知り、縁あって入手することになりました。
笛本体以外、何も手がかりのない笛だったため、さまざま調べつつ、自分で音階を探り、練習曲の譜を15曲ほど創り、
現時点では笛については、
“古典的な様相を模したネパールの民芸品的な木製横笛”、というところまでは、わかっています。
この、未知の笛を、創作琴と共に、
自分の「音」とするため、
身魂こめて、日々、自己修練していますが、
並行して、笛と琴が絆を繋ぐ作品世界だと知り、
ドラマ『陳情令』、アニメ『魔道祖師』、そして原作を鑑賞したことで、
そちらの作品世界にも、惹かれる流れになっていった次第。
笛の練習に夢中になる心地と、リンクしてしまった感じです。
最初のきっかけであり、憧れだった曲、
『陳情令』の「忘羨」は、未知の横笛を得て、まっ先に自分で音を探りつつ笛譜を創り、
以降、毎日ずっと吹き続け、練習しています。
少しでも綺麗に奏でられるようになりたいし、
まだヘタながらも、吹いていると、
深山幽谷の中、空を仰いで翼をひろげ、飛び立つような心地になれる、とても気持ちのいい曲です。
そのうち『陳情令』のドラマから、『魔道祖師』のアニメを観た過程で、
劇中曲である「忘羨」が、それぞれ別にあり、
独立した曲名があって、ドラマでは「无羇」、アニメは「羨雲」としていると知ります。
どちらも、主人公の理想とする境地…自由闊達で何にもとらわれない思いが、曲のタイトルになっているのかなと。
それは、作中でこの曲を創ったことになっている相方が、主人公に対して抱いている、自分と異なる世界への憧れのイメージとして、曲想されているのかと想像します。
アニメの曲も、穏やかで美しくて、これも譜を創り、練習曲に入れています。
こちらは、穏やかな川の流れ、雲の流れのような曲想。
曲として運指が難しいというより、
やはり情感を表すのが難しい曲です。
どちらも、物語の作品世界を知っていなくても、
独立した曲として、魅力的だと思う。
これら二曲の「忘羨」は、
私のライフワークである、大和の山中の古蹟への探査のさなか、
誰も人のいない、自然のみに向き合える場所で、
豊かな木々のさやぎと、湧き水のせせらぎのもと、
時を超えてきた、目に見えぬ土地神たちと共に、奏で響かせたい曲に感じました。
ところが、最近になって、
『魔道祖師』にはラジオドラマがあり、そちらでも別の「忘羨」があることを知ったのですが…
そちらは今のところ、笛譜に起こしていません。
卓越した笛子奏者さんの演奏だと、やはり素敵です。
でも私、ラジオドラマ版を聴いていないため、耳馴染みしていないこともあります(聞く機会がないことと、声と音だけだと、文章を読む以上に感覚が鋭敏になるので、聞くのが怖い気もされて)
が、
曲のみを聴いた感じが、私の印象では、古典的な曲想に感じられていないから…なのかしら。
他の二曲の「忘羨」ほどには、
まだ、吹いてみたいと思うところまで、感情が動きません。
そう言ってしまうと、どの「忘羨」だって、現代曲ではあるのですが、
たぶん、第一印象が、強く惹かれる要因なのだと思います。
同じ原作のテーマ曲、作品世界で重要な意味を持つ曲ながら、
並べて聴くと、印象がそれぞれですね。
ドラマ、アニメ、ラジオドラマで、
それぞれ、主題としているところが違うためかと思います。
自分で奏でてみるから、感じられる、
曲の叙情のようなものが心地よい。
今年になって、改めて私が出会えた、
奏者としての幸福に目覚めるきっかけをくれた、
作品であり、曲でした。
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