都幾川を14㎞ 歩いて気付いたこと、 考えたこと、思ったこと  その4


 尾根の上ではささやかな流れを愛でたのだが、それらが谷相いで奔流と化したであろう痕跡を、麓の下山路で体感した。正法寺門前の沢も轟音をたて白浪を巻き上げていた。
 バス通り、さすがに1時間半待つのも面白くない。里の風景を眺めながら東へ行く。ホースケアガーデンとはなんぞや。野の花が咲いている。虚空蔵堂。背丈ほどの柵に畑が囲まれているのは、何かを防いでいるのだろうか。ハーブと花のガーデン。都幾川渓谷鉄道・川の駅「蛍」、水出しコーヒー。とき庵。どんぐり山。ウッドデッキ。やすらぎの里。
 局前販売所。建具会館の売店で買物。慈光寺入口バス停。ここのWCもきれいなのだろうな。西平駐在所。ちょっと右にそれてみる。畑。資材置き場。下郷会館。木工芸センター・ツーワン。伝統美ふすま・池上。寧々房の看板。大きく右へカーブ。以後ケ谷橋。滝の鼻橋をゆっくり渡ってみる、築95年のトラス橋。見下ろすと堰堤と魚道で奔流が轟々と渦を巻く。
 日尺木工所。畑木工所。堰根橋、バス停は関根。延々歩いて、そろそろくたびれた。ベンチでもあれば小一時間なら待てるのだがなあ。よし三波渓谷バス停を終点としよう。
 県道大野東松山線を車で通るたび、越瀬橋から下流を見やる習いになっている。ここの緑泥片石は美しい。通過する一瞬、渓流の中に青みがかった岩々が眺められるのだ。
 鬼石の三波川に産する「三波石」と同様の岩々が、美しい景観を成しているから「三波渓谷」と呼ばれるのであろう。鬼石三波峡の美しさは下久保ダムによって破壊されたと聞く。それでもまだまだ訪なう人々の目を酔わす。スケールにしてとても伍することはできないけれど、都幾川三波渓谷の美しさは、鬼石のそれを思わせるのであろう。
 この青みがかった石、青石は、小川の下里が産地として知られる。慈光寺参道の青石板碑群をはじめ、比企入間近辺の青塔婆に連なる緑泥片岩のふるさとに近づいた気分がする。御荷鉾-鬼石-長瀞-下里-都幾川、これらの造山時代に青い石が育まれたのだろう。
 青い石にこだわりたくなるのは、ひとつはM高1年時の地学授業に依る。親鼻橋の橋脚が紅簾片岩上に立ってる、とか両神山はチャートとか武甲山は石灰岩とか、あれこれ憶えさせられた。片岩はヘンなのだ。もひとつ、実家の化粧塀に三波石が嵌め込まれている。この三波石は長野県のものだという。赤石山脈麓の大鹿村から運ばれたものが我が家の塀にくっついているが、三波石なのだそうだ。大鹿石ではないらしい。
 三波渓谷駐車場に到着、コロナ対策の掲示、バーベキュー禁止など示されてある。川にむかい急な小径を下るが、あれ、違うな。河原へ降りてみたけれど、ごく狭いスペースだけあるけれど、岩々が全部水没している模様。驚いたことに果敢に愛犬に水練を課している人がいる。奔流に放られた目標物を必死に追い渦巻く川を泳ぐ姿。過酷だ。
 おだやかな渓谷をいずれ訪ねたい。
 ベンチも無い。バスを待っても歩いても、乗れる八高線はどうせ同じ。明覚駅まで歩いてしまった。                   (完)                           

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