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シドニーのクリスマス -2.メリークリスマスの代わりに -

「メリークリスマス!」
ずいぶん昔のことだけどバックパックを担いでアメリカをバスでうろうろしていた時、小さなグローサリーストアでレジのお姉さんからふいに声をかけられた。
「メ、メリークリスマス」
ぎこちなく答えた私に彼女はにっこり微笑んでくれた。
その時のニューヨークはとても寒かったけど、私のこころの中にほんのりあたたかいものが広がった。

この光景が「ザ・外国のクリスマス」というデフォルトで入っていた私は、シドニーに来てから「ん?」と思うことがあった。
クリスチャンのトニーから「メリークリスマス!」じゃなく「ハッピーホリデーズ!/ Happy holidays!」と言われたからだ。

そう言われて気にしてみると、彼だけじゃなく「ハッピーホリデーズ」と言ってる人が周りに多かったし、インスタの投稿でもそうだった。それに、たとえばこの時期限定のクッションやクッキーなどにも「ハッピーホリデーズ」と書いてあるものが結構あった。

しかし、考えてみれば確かにそうだ。オーストラリアは多文化主義をとっていて、2016年の国勢調査によればオーストラリアの人口の33%は海外で生まれている。これを本人(オーストラリアの第1世代)だけでなく片方または両方の両親が海外で生まれた(オーストラリアの第2世代)まで拡大するとオーストラリア人のほぼ半数(49%)にまでのぼる。

2016年国勢調査
2016 Census: Multicultural 

多文化イコール多宗教でもあるわけで、つまりは他の人たちの信じる宗教を尊重するという配慮が言葉として現れているのが「ハッピーホリデーズ」。つまりトニーは私がクリスチャンかどうか知らないため、敢えて「メリークリスマス!」と言わなかったんである。さすが気配りの男、トニー。

ニューヨークの「メリークリスマス」から私が日本でぼーっとしてる間に世界は「ハッピーホリデーズ」に変わっていた。

たかが言葉、されど言葉。
ますます多様化してく世界で、今後は「ハッピーホリデーズ」が誰に対してもあたたかな温度をもった言葉になっていくんだろう。私がニューヨークでかけてもらったあの言葉のように。



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