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6分で泣いた、『あの頃をもう一度』

ディズニープラスで配信中のショートアニメーション、『あの頃をもう一度』。

たった一曲分程度の短さなのだけど、リズムにのって楽しくなって、切なくなって、涙が流れて笑顔になれる最高のショートアニメーション。

予告編はYouTubeで公開中。


原題は“Us Again”。
Usとは「私たち」のこと。この物語では夫婦である二人のことを示す。

6分なので話の概説のみでほとんどのストーリーをカバーしてしまうけれど、年老いた夫婦が不思議な天気雨に濡れてる間だけ若い頃の体を取り戻すというもの。

おばあちゃんは陽気におじいちゃんを外へと誘うが、年老いたおじいちゃんはまさに腰が重いようで、ソファと合体状態。
でも雨に濡れて「雨に唄えば」もびっくりなくらい華麗に夜の街を駆けておばあちゃんの元へ。

踊り合う二人は絶対プロの振付師さんに頼んだよねこれってくらいかろやかに舞い、その二人のダンスもさることながら、雨に濡れた地面の反射もとても綺麗でうっかり水面に目が釘付けに。毎回ディズニー/ピクサー作品を見るたび、CGアニメーションはここまできたかと圧倒される。

雨に打たれていないと、途端に元の老体に戻ると気づいたおじいちゃん。海辺へと流れる雨雲を必死に追いかける。
きっと、若くてエネルギーに満ち溢れた姿の方が彼女だって嬉しい、そうでない自分では彼女を喜ばせられないと危惧するように、悲痛そうに。

けれどおばあちゃんは、そんなことしなくたって、私たち二人、一緒にいれるだけで幸せなのよと宥め諭すように頬に触れるおばあちゃん。

おじいちゃんにとって「もう一度あの頃の二人へ」と思いを馳せるのは若かった頃の軽やかな自分と彼女。
でも、おばあちゃんにとっては、若い頃へ戻るのも、今の二人共に歳を重ねた姿に戻るのも、どっちも「二人」でどちらも尊く、今までの年月の先にある「私たち二人」が愛おしいのだと訴えかけるようで。

こんなに言葉を連ねたくなってしまうほど二人の表情は雄弁なのに、この6分のアニメーションにはセリフが一つもない。

何も語らずに全てを、そして言葉に収まりきらないそれ以上を語るというのは、音楽や踊りをはじめとする芸術で幾度幾星霜と表現され続けていることだけれど、このアニメーションもまたそれに連なる作品の一つ。それを享受できることを、嬉しく思う。

「あの頃」も内包した「今」の私たちを、もう一度。

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