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レジャーシート

 子供ころ遠足などでお昼の時間になるのが嫌だった。お弁当が嫌だったのではなく、レジャーシートを広げるのが嫌だったのだ。私はレジャーシートを持っていなかった。

 遠足の時に私が持たされたのは、ビニールの正方形のシート。今考えれば、あれはビニールの風呂敷だったのではないかと思う。ピンク地に花が印刷されていた。大きさは1メートル四方くらいだったか。広げてちょっと座る文には十分だろう。母と出掛けた時もそれを使っていた。小さいので背中合わせに座るしかない。

 遠足ではシートの上に荷物を乗せ、靴を脱いでシートに座って、友達とお弁当を食べ、しゃべる。自分一人だけの広さではダメなのである。私が持っていたのは、自分の荷物を置いて自分が座れば他にスペースはない。友達が一緒に座る場所はないのである。

 他の友達が持っていたシートは所謂レジャーシートで大きいものだった。皆で靴を脱いで座れる大きさ。幸い、友達が誘ってくれてその大きいシートに混ざって座ることが出来た。「○○ちゃんのシート小さいね」と言われるのがすごく嫌だった。

 なぜ普通のレジャーシートではなかったのだろう。子どもだったからどこで売っているか知らなかったし、家の家計が豊かでないことは何となく分かっていたので、皆と同じレジャーシートが欲しいとは言えなかった。

 大人になって100円均一のお店でレジャーシートを見つけた時は衝撃を受けた。子どもの時に欲しかった普通のレジャーシートが今ではこんな値段で買えるのかと。普通のレジャーシートが私の手元には今では2枚もある。大勢が座れるスペースを作ることが出来る。ピンク地に花が印刷された正方形のシートはその後どうなったのか分からない。

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