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終戦記念日、その御心

今日、8月15日は「終戦記念日」です。日本に数多ある祝日の内、絶対に覚えておかなければならない祝日の1つです。なのでこのエッセイでは、終戦記念日についてごく簡潔にまとめたいと思います。関連書籍も載っけておくので、興味のある方はそちらもどうぞ。

概要


日本が終戦を迎えた日、ということで今日が終戦記念日なのですが、実は、公式に戦争が終わったとされる日は前日である8月14日なのです。この日は、ポツダム宣言を受諾した日になります。ポツダム宣言の内容は、「吾等ハ日本国政府ガ直ニ全日本軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ且右行動ニ於ケル同政府ノ誠意ニ付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府二対シ要求ス右以外ノ日本国ノ選択ハ迅速且完全ナル壊滅アルノミトス」(同13条。Wikipediaより)というもの。

即ちこれは、この宣言を受諾したら直ちに軍隊に向け無条件降伏をしましたよと宣言しろ、という意味になります。

この宣言を受諾した時点で戦争は終わったと言えるのですが、あくまで宣言を受諾しただけで形式的な戦争の終わりを迎えていません。そして78年前の8月15日、つまり今日ですね。昭和天皇が軍隊や国民に向けて読み上げた「大東亜戦争終結ノ詔書」。いわゆる玉音放送ですが、これの発布を以て終戦したとする見解に則り、8月15日が終戦記念日と制定された訳ですね。

その後アメリカ軍の進駐が進み、9月2日に、米国のアイオワ級戦艦2番艦であるミズーリの艦上にて降伏文書に署名し、正式に敗戦します。アメリカでは、この9月2日が「対日戦勝記念日」となっています。アメリカに限らず対日戦闘を繰り広げた多くの国は、この日が戦勝記念日としている国が多いそうです。終戦の定義は各国でバラバラであることが分かりますね。

日本人の犠牲者は310万人に上るとされ、激甚な戦争であったことが伺えます。戦争論で見ると、太平洋戦争は「総力戦」であるとされ、これは「持ちうる国力のありとあらゆるものを動員し、全て出し切り戦う戦争」を意味します。マンパワーも資源もすり減らして戦う究極の戦争です。

終戦後はどこの国も疲弊し消耗しきった中、日本は凄まじい経済成長を遂げ、「東京23区の土地の値段でアメリカ全土が買える」と言わしめるほどの経済大国となりました※。このような日本は、言ってしまえば戦場で散った英霊の犠牲の元に成り立っており、我々はその英霊を忘れずに今を生きていく必要があるわけですね。

時折政治闘争の槍玉に挙げられる靖國神社。ここに祀られているのは「戦没した英霊」全員です。太平洋戦争に限らず、なんと戊辰戦争以降の英霊全員が祀られており、その柱の数は246万6千以上にもなるそうです。

参拝する事が軍国思考であるとかそんな事は、今日この場において全く関係ありません。ただただこの日は戦没した英霊に向けて、安らかに祈る日にしてくださいね。

大東亜戦争終結ノ詔書

さて、終戦記念日となった由来である「大東亜戦争集結ノ詔書」。「耐えがたきを耐え忍びがたきを忍ぶ」というフレーズが余りにも有名な本放送ですが、そのフレーズからも、昭和天皇の苦悩がありありと浮かんできます。以下、全文を記載します。

朕深ク世界ノ大勢ト帝国ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ収拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク 朕ハ帝国政府ヲシテ米英支蘇四国ニ対シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ

抑々帝国臣民ノ康寧ヲ図リ万邦共栄ノ楽ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遣範ニシテ朕ノ拳々措カサル所 曩ニ米英二国ニ宣戦セル所以モ亦実ニ帝国ノ自存ト東亜ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他国ノ主権ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス

然ルニ交戦已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海将兵ノ勇戦朕カ百僚有司ノ励精朕カ一億衆庶ノ奉公各々最善ヲ尽セルニ拘ラス戦局必スシモ好転セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス 加之敵ハ新ニ残虐ナル爆弾ヲ使用シテ無辜ヲ殺傷シ惨害ノ及フ所真ニ測ルヘカラサルニ至ル

而モ尚交戦ヲ継続セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神霊ニ謝セムヤ是レ朕カ帝国政府ヲシテ共同宣言ニ応セシムルニ至レル所以ナリ

朕ハ帝国ト共ニ終始東亜ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ対シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝国臣民ニシテ戦陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内為ニ裂ク且戦傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ

惟フニ今後帝国ノ受クヘキ困難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル 然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所耐ヘ難キヲ耐ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス

朕ハ茲ニ国体ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ乱リ為ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム

宜シク挙国一家子孫相伝ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ総力ヲ将来ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ国体ノ精華ヲ発揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克く朕カ意ヲ体セヨ

余は、深く世界の大勢と、帝国の現状をかえりみて、非常措置をもって事態を収拾しようと欲し、ここに忠実にして善良なる汝ら臣民に告げる。 余は帝国政府に、米英中ソの四国に対し、そのポツダム宣言を受諾する旨、通告させた。

そもそも、帝国臣民の安寧をはかり、万国が共存共栄して楽しみをともにすることは、天照大御神からはじまる歴代天皇・皇室が遺訓として代々伝えてきたもので、余はそれをつねづね心がけてきた。先に米英の二国に宣戦した理由も、実に帝国の独立自存と東アジア全域の安定とを希求したものであって、海外に出て他国の主権を奪い、領土を侵略するがごときは、もとより余の志すところではない。

しかるに、交戦状態はすでに四年を過ぎ、余の陸海軍の将兵の勇敢なる戦い、余のすべての官僚役人の精勤と励行、余の一億国民大衆の自己を犠牲にした活動、それぞれが最善をつくしたのにもかかわらず、戦局はかならずしも好転せず、世界の大勢もまたわが国にとって有利とはいえない。そればかりか、敵国は新たに残虐なる原子爆弾を使用し、いくども罪なき民を殺傷し、その惨害の及ぶ範囲は、まことにはかりしれない。

この上、なお交戦を続けるであろうか。ついには、わが日本民族の滅亡をも招きかねず、さらには人類文明そのものを破滅させるにちがいない。そのようになったならば、余は何をもって億兆の国民と子孫を保てばよいか、皇祖神・歴代天皇・皇室の神霊にあやまればよいか。以上が、余が帝国政府に命じ、ポツダム宣言を受諾させるに至った理由である。

余は、帝国とともに終始一貫して東アジアの解放に協力してくれた、諸々の同盟国に対し、遺憾の意を表明せざるをえない。帝国の臣民の中で、戦陣で戦死した者、職場で殉職した者、悲惨な死に倒れた者、およびその遺族に思いを致すとき、余の五臓六腑は、それがために引き裂かれんばかりである。かつ、戦傷を負い、戦争の災禍をこうむり、家も土地も職場も失った者たちの健康と生活の保証にいたっては、余の心より深く憂うるところである。

思うに、今後、帝国の受けるべき苦難は、もとより尋常なものではない。汝ら臣民の真情も、余はそれをよく知っている。しかし、ここは時勢のおもむくところに従い、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、それをもって万国の未来、子々孫々のために、太平の世への一歩を踏み出したいと思う。

余はここに、国家国体を護り維持しえて、忠実にして善良なる汝ら臣民の真実とまごころを信頼し、常に汝ら臣民とともにある。もし、事態にさからって激情のおもむくまま事件を頻発させ、あるいは同胞同志で排斥しあい、互いに情勢を悪化させ、そのために天下の大道を踏みあやまり、世界の信義を失うがごとき事態は、余のもっとも戒めるところである。

そのことを、国をあげて、各家庭でも子孫に語り伝え、神国日本の不滅を信じ、任務は重く道は遠いということを思い、持てる力のすべてを未来への建設に傾け、道義を重んじて、志操を堅固に保ち、誓って国体の精髄と美質を発揮し、世界の進む道におくれを取らぬよう心がけよ。汝ら臣民、以上のことを余が意志として体せよ。

http://www.rosenkranz-jp.com様の現代語訳

皇室の特殊性

時の天皇は、翌年に人間宣言が発布されるまで、万世一系の神様であると信じられてきました。と言うのも、前回の記事でも紹介した日本国を日本国たらしめてきた天皇制、その初代天皇である神武天皇、彼は日本の最高神である天照大神の子孫であるとされているからです。

家系図作成本舗様より

そんな由緒正しき神武天皇の血を引いている昭和天皇が、(建前であったとしても)どれだけ国民を思って、東アジアを思ってこの発言をしたかと、そしてどんな思いで国民は玉音放送を聞いていたかを考えると、胸が熱くなります。

これを見て終戦記念日について、少しでも思いを馳せていただければ幸いです。

おまけ

ちなみに、戦前の日本の見解は、仮想敵国であったアメリカに備え、元々英米と戦闘にならない限りにおいて南方資源の獲得を目指すというものであり、戦争はその末にある1on1のを想定していて、仮に連合国全体を相手取った場合は当然勝てないものとの認識がありました。しかし太平洋戦争は、南方作戦とその過程の英米の圧力との軋轢に耐えられなくなり、真珠湾攻撃から始まったとされるものです。

資源地帯を迅速に抑え、米英との早期講和を目指すという方針で一貫して戦っていた日本軍でありましたが、勝てないと分かっていた戦いを見守っていた昭和天皇はどんな思いだったんでしょうね。


※本来はそれどころではなく、もっと狭い土地だけでアメリカ全土が買えたそうです。びっくり。

関係書籍

日本を考える編集部『終戦記念日緊急出版 昭和日本のターニングポイント 天皇の決断』ゴマブックス.2013

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