遥かに貴き善いこども
「神様を信じてるかっていうと、俺は信じてますね」
自分の命運を握る手札を撫でながら、織賀はたおやかにそう答えた。テーブルの上に伏せられたそれらのカードについては、既に確認済みである。何かしらの作為が無い限り、中身が変わっていることはないだろう。
どこかで読んだ話によると、物騒な世界に身を置いている人間は、どこか信心深い人間が多いらしい。目の前のヤクザだって、口にはしないけれど神の存在を信じているはずだ。それにしても、人生を賭けたポーカーの最中に出てくるワードとしては、出来過ぎた言葉だ。神様なんて。
この一瞬の内に、織賀は密かに自分の人生を思い返していた。人間の人生と神様はとても相性がいい。ダイジェストで振り返れる、他愛のない人生だ。
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