その鳥を覚えてる
來山はぐみは基本的にはフレンドリーな人間である。シュールージュのバッスルロングワンピースを着て、薔薇の花をふんだんにあしらったカチューシャを併せている人間が、笑顔をアクセントにしていないなんて不敬だからだ。何に? 勿論、愛しのお洋服に。
そういったわけで、平常の彼女はどんな相手でも平等に相手をする。好奇心でいっぱいの目をした相手にも、あるいは心の奥底を探ってこようとするような相手にも。誰にだって当たり障りなく接するのは、その実最高の防御なのだ。
けれども今回のお相手は、今までのどのパターンにも当てはまらなかった。真面目そうなリクルートスーツに鹿撃ち帽を被り、少しだけはにかみながら話しかけてくる男。首から上は、古式ゆかしい名探偵のようにも見える。それにしたって彼は大学に居るには場違いだった。
「やあ、はじめまして。私はハイムリック北崎。探偵を生業にしている者だ」
「あら、こんにちは。私は來山はぐみ。そうね、ロリータと愛と虚言を生業にしている者よ」
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