都市の子ども
大学に合格して東京にやってきたとき、宿に向かうためにモノレールに乗った。工業団地の間をすり抜けて走る列車の座席に座って東京湾の水の色を眺めていると、ああやっと故郷を離れたんだなという気がした。自分は独りで、自由で、どこにだって行ける。誰だってそういうことを考えることがある。もちろん、あなたはどこまで行っても独りではなく、自由ではなく、行ける場所なんて本当に限られているのだけれど。
巣鴨に宿を取った。一泊3500円くらい。建物の表面が油膜で虹色に輝いている小さなホテルだった。座敷牢みたいな部屋はベッドで7割埋まり、あとの3割は文机と椅子と冷蔵庫だった。廊下には古びた自動販売機があり一本500円のビールを売っていて、挙句の果てに門限まであった。居酒屋に入って、ほうれん草のおひたしと砂肝のから揚げと日本酒を2つ飲んだら5000円取られた。東京は物価が高いんだな、と思った。
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