見出し画像

どこにもない家に帰りたいこと

 ああ、家に帰りたい。そう口に出してみて、ここは自宅のデスクであることに気づいた。そういうことはときどきあって、じゃあ帰りたい家とはどこなのだろうとよく考える。実家は論外として、十代を過ごした破滅シェアハウスだろうか? それは多分ちがう。あの暮らしはなつかしいけれど、帰りたいかと言われたら「絶対に嫌だ」としか言いようがない。大学時代を過ごしたアパート、これも違う。かつて勤めていた銀行の寮は実家と同じくらい論外だ。こうして考えると、僕は今人生で一番幸福な家に住んで幸福な暮らしをしている。今月の家賃の払いも心配ないし、炊飯器には米も炊けている。なのに、僕の口からは「家に帰りたい」という言葉がついて出る。

ここから先は

1,776字
発達障害ライフハックのような実用文章ではなく、僕がライフワークとして書きたい散文、あるいは詩に寄っていくような文章を書いております。いろいろあって、「善い文章」を目指して書くようになりました。ご興味ありましたら是非。

玉雑記

¥500 / 月

あまり多くの人に向けては書きたくないこと、表に出なかった商業原稿、最近の雑記など月2回~(最近は大体4回)更新します。色々あって、ツイッタ…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?