もう行かない街のこと、それから鱒釣りのこと

　久しぶりに高田馬場に行ったら、なんだか見たことのない街になっていた。疫病の季節はここぞとばかりに進出するアジア圏勢力が台頭していたけれど、最近はまた日本人が押し返している気もする。大学周りの飲食店はかなりのダメージを受けたけれど、徐々に回復を始めている様子だ。久しぶりに大きな音でジャズが聴きたくなってお店に入ったら、なんと禁煙になっていた。え、禁煙になったんですか？　と尋ねると、もう４年も前のことだよ？　と返されて、前回ジャズを聴きに来てからもうそんな時間が経ったのかと驚かされた。誰も一言も喋らないまま、音に乗って揺れていたり本を読んでいたりする店。今時珍しい、ストロングなジャズ喫茶。そんな店すら禁煙になるご時世なのだから、高田馬場の街並みだって変わっていくだろう。

　とにかく、めそめそするのはやめようと思っている。どう考えても何もかも厳しいのはわかりきっているけれど、決めたことを精一杯やろう。どこかに別の道があったんじゃないか、みたいなことを考えても無駄なのは流石に経験から学んだし、なるべくふだんのトーンでコラムを書いて、いつも通り月末に更新した。一本だけはどうしてもめそめそした内容にならざるを得なかったけれど、それはそれで仕方ない。もちろん、僕はものすごく怒っているし悲しんでいるし、それらは行動にしなければいけない。その結果はたぶん、僕にとって幸福なものにならないだろうとも思う。でもまぁ、仕方がない。そういうものなんだろう、わかんないけれど。