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どろどろだよ

 依存症は不治の病だ。
 僕が本格的な睡眠薬依存に陥ったのは、多分十八歳か十九歳の頃だったと思う。実家を出て、酒を自由に飲めるようになった時、じわじわとくすぶっていた悪癖はついに本物の「依存」に成りあがった。どの段階を以って「依存症」とするかは諸説あるけれど、アルバイトに出る前に睡眠薬とウォッカを煽るようになっては最早疑う余地もない。どこに出しても恥ずかしい依存症患者の一丁上がりだ。でも、その頃はそうでもしないと仕事に出ることが出来なかったのだ。しかも、当時僕が住んでいた町は本当にひどいところで、酒の匂いをさせた呂律の怪しい奴でも「アルバイトの時間にちゃんと来る」だけマシな存在だった。だから、僕はクビにもならず仕事を続けることが出来た。

 当時の記憶は正直なところほとんどない。仕事は午後の遅くから始まるものだったので、15時を過ぎる頃になると「出がけの一杯」を用意した。ロヒプノールを2つか3つにウォッカをショットに一つ。この塩梅が難しい。多すぎると仕事にならないし、少なすぎると家から出ることも出来ない。もちろん、仕事中の「補給」のためにウィスキーのポケット瓶と睡眠薬のシートをポケットに入れるのも大切な習慣だ。仕事中に意識や気力が怪しくなったら「継ぎ足す」のだ。今思えばバレバレだったとは思うけれど、せめてものデリカシーとして匂い消しのガムを噛む。

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発達障害ライフハックのような実用文章ではなく、僕がライフワークとして書きたい散文、あるいは詩に寄っていくような文章を書いております。いろいろあって、「善い文章」を目指して書くようになりました。ご興味ありましたら是非。

玉雑記

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