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羽根について

 三十代になるまで、新幹線に乗ったことがなかった。
 東京の人にこの話をすると結構びっくりされるんだけれど、僕が生まれて初めて新幹線に乗ったのは、依頼があって福岡の捕鯨イベントを取材したときのことで。東京ー福岡間の移動があまりに快適で、正直なところびっくりした。「長い距離を列車で移動する」で僕が最初に思い出すのは、大学生の頃青春十八きっぷで東京ー札幌間を移動したときのことで、まぁそのなんというか…二度とやりたくない(青森まではまだいいとして、函館ー札幌間が地獄過ぎる)。なのでやはり、飛行機と新幹線はすごくいいと思う。そういえば、1時間に1回は鹿を轢いて停まることで名高い釧網線は大赤字で存続の危機と十年前くらいに聞いた覚えがあるけれど、今でも鹿を轢いてるのかな、二度と乗りたくないな。

 空港が好きだ。
 海外に行くとき、ワクワクしつつちょっと遠いなぁ…と思う成田も好きだけれど、やはり上京して初めて降り立った羽田空港とモノレールの感動は忘れられない。港湾倉庫の立方体にうっすら浮いた錆び、蜂の巣みたいに並ぶマンションの部屋々々、不意に現れる東京湾に並ぶ立ち杭。我ながら田舎者のお上りさんだなぁ、とは思うのだけれど。僕は東京モノレールの羽田線が大好きで、学生時代は景色を見て、音楽聴き、本を読むためだけに乗っていた。僕は東京の海や川がすごく好きだ、人工的で、小さくて、やさしくて。モノレールに乗って眺める東京湾沿いの光景は、なんだか少しさみしくて懐かしい気持ちになる。あの情緒を音にすると、大体Lo-Fiとかそういう感じになるのかもしれない。空港の話をするのは忘れてた。

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発達障害ライフハックのような実用文章ではなく、僕がライフワークとして書きたい散文、あるいは詩に寄っていくような文章を書いております。いろいろあって、「善い文章」を目指して書くようになりました。ご興味ありましたら是非。

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