病を経て、ゆっくり歩く
「喉を中心に炎症が鼻まで広がってますね、苦しかったでしょう」
耳鼻科医はそう言って、あの細長くとがったおっかない機材(鼻の奥を吸引するのに使うやつ、とても痛い!)の先端を外した。口腔外科での処置には限界があるということで耳鼻科にもかかることになってやっと気づいたのだけれど、僕はこの一年ほど鼻で呼吸ができていなかったらしい。なんだか息苦しい、と思ってはいた。でもそれは眠ろうとするとヒューヒューと笛みたいな音を立てる喉や気管支の炎症、それに鬱。そういうものが原因だと思い込んでいて、「鼻呼吸ができなくなっている」ことになんてまるで気づかなかった。そんなことってあるんだな。
吸入を終えて一時的に鼻が通ると、視界が急激に開けて常につきまとっていた頭の重さが幾分軽くなっているのがわかった。本当にひどい二年ほどだったと思う。いきなり歯茎からあごの骨が飛び出したところから始まり、そこから全身に原因不明の炎症が起き、駆け込んだ病院で採血の「ついで」に測った血圧は240もあった。「よくここまで歩いて来ましたね…」としみじみ言ってくれたお医者さま(循環器の専門医だ)には未だにお世話になり続けている。おかげさまでしぶとく居座った血圧も上が120程度で落ち着きを取り戻した。人間の身体を流れる血液の圧力が半分になるなんて、そんなことってあるんだな。庭に水を撒くホースの流量を調整しているとき、そんなことをつくづく思った。
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