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白くて大きな犬、東京の水、一番美味しい飲み物

 東京の水は不味いと聞かされていた。実際、幼い頃旅先の東京駅で飲んだ水はひどく不味かった覚えがある、確か叔母の結婚式だったんじゃないかな(彼女はその後もちろん離婚した)。それから色々なすったもんだの末、新宿に居所を落ち着けてもう十年近くにもなるし、僕は東京の水に対して特に不満を持っていない。お茶が尽きれば水を飲むし、子どもの頃に感じたあの不味さの正体がなんだったのは未だにわからない。仮説はいくつかある。一つは浄水技術の向上。これは有力な仮説だし、そういった論考もいくつか読んだ。あるいは味覚の摩耗。これもまたあり得る話だ。子どもの頃は世界のあらゆるものがもっと刺々しかった気がするし、あの頃に比べればずいぶん世界は丸みをましたような気がする。それからなんだろう、結局のところそれは大した問題ではなかった、そういうことかもしれない。

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発達障害ライフハックのような実用文章ではなく、僕がライフワークとして書きたい散文、あるいは詩に寄っていくような文章を書いております。いろいろあって、「善い文章」を目指して書くようになりました。ご興味ありましたら是非。

玉雑記

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