夜について
夜にならないと家の外に出られない、鬱がひどくなるといつもそうだった。世界はあまりにまぶしくて、情報量が多すぎる。ずっとそんな風に感じられていた気がする。昼間に家の外に出ると、いつも靴の先を見て歩いていた。通りすがる人たちはみんな幸せに見えたし、コンクリートが綺麗に舗装されていると腹が立った。道なんてひび割れているくらいがちょうどいいし、街をこれ以上綺麗な鋭角にするのはやめてくれ、それは僕の目に刺さるんだ。
散歩は万病に効くというんだけれど、これは実際その通りだろうと思う。一日30分でも一時間でも家の外に出て、陽に当たって歩くことができたら、それは実際のところ素晴らしく健康に良い。問題はそれが出来ないことくらいで。いつも通っている床屋のマスターに「君は何かを読まずに道を歩けないのか」と言われた。「君が店の前を通る時、いつもスマートフォンを眺めているのは現代病だなと思ったけれど、最近は書類や本のパターンもあって、いつか車にぶつかるんじゃないかと不安でしょうがない」。
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