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上手く書けないことを上手く書かない

 上手く書けない物事はたくさんある。文章の技術が足りなかったり、色んな事情が混みあってたり、商売としての問題だったり。そういうことがたくさんあって、上手く書けなかったことは積みあがっていく。たぶん、僕はまだこの数年自分に起きた変化に追いついていないんだろう。なんとか非正規雇用に食らいついていくために鞄の中身を何度も点検していたのが、たぶん30とか31歳の頃だ。それに比べると、今の暮らしは全く別物でそれは本当にありがたいことなんだけれど、僕は未だに「先生」と呼ばれることにも、サインを書くことにも慣れていない。慣れてはいけないような気もするけれど、それも間違いのような気がしている。慣れたくないことに、慣れてはいけない気がすることに、慣れていかなければいけないのかもしれない。

 僕は長年、「自分が一番下」だと思っていた。世の人は大抵において僕より仕事が出来て、僕より要領がよくて、僕より楽しく隣人と雑談出来るのだと思っていた。それはまた、一定事実でもあった。僕は仕事が出来なくて要領の悪い、雑談の下手くそな障害者だから。そんな奴が、数年経ったら作家先生でございと講演をしている。物事が進むスピードに、ついていけない。人生はいつもそうだ。ジェットコースターみたいな人生を望んだことは、誓っていうけれど一つもない。僕が最初に入学したのは教育学部で、選んだ理由は「一番手堅く公務員になれるから」だった。あの不景気な街で手堅く収入を得て人生をやっていく方法を、一応なりともちゃんと選んだのだ。

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発達障害ライフハックのような実用文章ではなく、僕がライフワークとして書きたい散文、あるいは詩に寄っていくような文章を書いております。いろいろあって、「善い文章」を目指して書くようになりました。ご興味ありましたら是非。

玉雑記

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あまり多くの人に向けては書きたくないこと、表に出なかった商業原稿、最近の雑記など月2回~(最近は大体4回)更新します。色々あって、ツイッタ…

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