ワタナベ

本を読んだり、社会や人生について考えています。たまに小説を書いたりしています。

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  • 社会不適合者、人生や社会について考える

    社会不適合者が人生や社会について考えます。

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【読書感想】発達障害は〈擬態〉する 抑圧と生存のカモフラージュ

「発達障害は〈擬態〉する 抑圧と生存のカモフラージュ」を読んだ。 https://t.co/tr9uyPaCVn 本書のキャッチコピーは「擬態とは、周囲に合わせるために自分の魂を殺害し続ける行為である」だ。健常者からしたら大袈裟と思うかもしれない。誰でも取り繕うことはあると思うかもしれない。 はっきり言うが、全然大袈裟ではない。むしろ的を得た表現だ。魂を日々すり減らしているあの感覚を見事に表現している。 本書は11人の当事者をインタビューし著者が注釈を加えている。正

    • 死にたいとつぶやくバーをやることになった

      この社会で「死ぬ」ことは良くない事とされている。平和で豊かになった反面、人は命を大事にし過ぎるようになった。寿命間近の老人でさえコロナで死ぬことは許されない。自殺なんてもってのほかだ。 死にたい——この一言を言うことさえ憚れる。 社会はどんどん清潔で潔癖になっている。多様性の時代だと嘯きながら、社会不適合者の居場所はどんどん失われれいる。求められるのは個性ではなく社会性。まるで、人間である前に社会人であれと言われている気分だ。 なんとも息の詰まる社会だ。 そして、この

      • 【読書感想】実力も運のうち

        マイケル・サンデルの「実力も運のうち」を読んだ。 本書は、メリトクラシーと、それに付随する知的職業階級(インテリ・エリートされる人)の傲慢に対する批判の本だ。 そもそもメリトクラシーとは何なのか。日本語では能力主義と訳され、本書の解説では能力主義というより功績主義と書かれている。個人的には努力信仰、つまり「私が成功したのは努力したからであり、成功してないのは努力が足りないから」だという考えがメリトクラシーの本質を表していると思う。 人生は個人の努力で決まるわけではなく、

        • なぜ本を読むのか

          年末年始、実家に帰ろうと思っていたが、新幹線の予約をとり忘れて帰省でず、今年も東京で過ごすことになった。 時間ができたので積読していた本を読むことにした。マイケル・サンデルの「実力も運のうち」を読み終え、今はジョナサン・スウィフトの「ガリバー旅行記」を読んでいる。 ふと、自分はなんで本を読んでいるのだろうかと思った——そして、答えも本の中にあった。 俺が本を読むのは、脳を鍛えるためであり、思考を研ぎ澄ませるためだ。 本を読めば読むほど、人と話が合わなくなる。 本を読

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          創作テロリズム

          プロローグ1文岡公威はインターネット上に小説を公開するアマチュア作家だ。 今もパソコンのキーボード打ち鳴らし、執筆に没頭している。 何かに取り憑かれたように書き殴る。 その文章は、公威の鍛えられた肉体と猛禽類を連想される鋭い目つきと同様に、力強く鋭敏だ。 背後の本棚には、創作のための資料——科学や歴史・宗教・哲学・社会学などの本がびっしと埋め尽くされている。 公威の手が止まった。 執筆していた作品が完成した。 タイトルは「自由の戦士」。 公威は読者に一切媚びな

          創作テロリズム