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しくじりだらけの種まき

雲行きが怪しい、とか。暗雲立ち込める、とか。そんな言い回しに共通するもの。
そう、太陽が見えないこと。
それだけで未来がやや暗い、と表現することにひどく納得する朝。
梅雨入り宣言まで秒読みの曇りの日に、ベビーリーフの種を撒いてしまった。

日記専門店「日記屋 月日」さんの「月日会」に入会して、日記を書いています。
せっかく日記を書くなら、観察日記を書いてみるいい機会じゃないかと思いました。
元より、種から植物を育てる、ということを以前からしてみたかったのです。
新しいことを始める時のワクワクは、何歳になっても素敵なもの。

初心者にはベビーリーフがいい、というコラムを見つけて、ホームセンターに突進しました。
ある、あるある。コーナーができてる。ベビーリーフの栽培キットが数百円。こんなにお安いんだ、と驚く入門者。
隣のスイートバジルのキットなんて、既に半額になっている。へえ! お得!
どうして半額なのか思い至らない、この時点では。

ホームセンターから帰ってきた時には日も暮れていた。
一刻も早く始めたかったけど、夜より朝に種まきした方がいいな、と一旦保留に。
とりあえず付属の説明書をよーく読む。よーく読んだ。そのつもりだった。

明けて翌朝、もう居ても立っても居られない。
昨日読んだ説明書の記憶を頼りに、小さな種まき台をマグカップにセットして(家庭用マグでミニ水栽培できますという商品なのだ)、付属の薄いスポンジに水を吸わせて、その上に重ならないように種をまいた。
そして、日当たり! 作業机の前の障子をちょっと開けて、マグを置いた。

そして気づいた。日当たりが、ない。窓の向こうの空には雲が立ちこめている。
もう一つ気づいた。我が南東北は、梅雨入りまで秒読みであることを。
(東北という土地はもとより梅雨の入り明けが曖昧な土地ではありますが)
慌てて今日の天気を見る。午前中は曇り、晴れ間は午後から。
晴れ間は午後から……!!!(リピートが叫び)

ここでよーくと考える、遅まきながら。
そもそも、ほぼ梅雨時期に種をまくってどうなん? 日当たりがあまり望めない時期にどうなん? と。
だからホームセンターでも、既に半額になってる種があったんじゃ?
でも、もうまいちゃった……。どうしよう、ろくに日当たりがなくて、うまく育たなかったら。私が待てなかったばかりに、種を無駄にしちゃったら。

もう一つまずい事態があった。昨日あれだけ熟読した説明書が見当たらないのだ。
水換えとか、肥料を加えるタイミングとか、全部そこに書いてあるのに。
捨てたのか。捨てちゃったのか、私。
熟読したとはいえアラフォーの頭、既に記憶は曖昧……。

ううう、やっちまったのかあ、と立ち尽くすこと数分。
細く開けた障子の周辺が、ふと、一挙に明るくなった。
遠い空に雲の切れ間が訪れ、日が差し込んだ。
種をまいたマグカップが、ぶわああっと強いオレンジ色の日光に包まれる。カップの足元の影のくっきりしたこと。
日の光ってすごい。雲が流れて日差しはほんの1分程度だったけど、目覚ましいほどの明るさだった。
植物はそれを糧とする、実際に目で見てこれほど納得する事実があろうか。

種は蒔いた。蒔いてしまったのだ、このまま見守ろう。
日光の代わりになるLEDライトなんてものも知ったけど、さすがに用意がない。
改めて、人はしくじりからしか学ばないのだ、としみじみ思い知る。最初から準備万端な人はいない。
とにかく、やってみます。

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