サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する(書評)

総合評価

★★★☆☆ (おもしろい)

あらすじ

樺太/サハリン。日本とロシアの間でゆれる歴史を持つ土地だ。

宮沢賢治。日本人にとっては非常になじみのある人物だ。

日本の歴史のなかで幾度となく出てくるこのふたつが交わるときがあった。そう、宮沢賢治が樺太/サハリンを訪れたことがあったのだ。

そのときに宮沢賢治は何を感じていたのだろうか。実際に樺太/サハリンを訪れるなかで、宮沢賢治が花巻~樺太/サハリンを移動するなかで作った詩を読みながら当時の心境を紐解いていく。そして、今も樺太/サハリンに残る日本の歴史を残す場所や、ロシアの東端に位置する土地としての歴史も紐解いていく。

気軽に読めて、宮沢賢治の時代や日本の建物が作られていた時代など、当時の歴史に思いを寄せながら読める本だ。

印象に残ったところ

まずは、樺太/サハリンについてどんなところなのか想像しながら読める時間を取れたのは貴重なことだと思った。

この土地は学生時代に歴史は勉強したことをあるものの、今まであまり馴染みのない場所であった。しかし現在、日本に一番近い外国であるこの土地は今の生活に影響を与える可能性が地理的なうえでも高い場所である。その土地について考える時間をとれるは、有意義だった。当時の日本の存在を感じながら、自分の世界のなかの出来事として考えることができた。

宮沢賢治の詩は色々あるが、その詩を作ったときにどんなことを感じていたのか。詩を読んだだけでは分からないことも多い。しかし作られた背景を知ることで、詩の理解も深まるし、詩を通してその背景をみると新しい発見もある。

宮沢賢治が花巻から鉄道で北へ北へ向かうなかで作られた詩が沢山紹介されていた。その詩を読むたびに心を動かさせられた。妹の死を宮沢賢治がどのように捉えていて、旅を進めるにつれて心境がどのように変化していったのか。サハリンの景色がその心境にどのような影響を与えていたのか。

一人の人間の旅を追体験しているようだった。

また、ロシアの東端にある土地ということで、おそらくロシアの人にとっても馴染みは少ないものの知っている場所ではあると思う。

実際に訪れるのは難しくても、本で読むだけでも、その土地に親しみを持てる。親しみを持てると、今まで無機質に見えていたものが、感情を入れたものとしてみることができる。たったそれだけのことで友好的な感情を持つこともできる。

エッセイや小説は人生に使える直接的なテクニックを書いているわけではないが、例えば今回のようなノンフィクションものならその土地や人物に感情を寄せる時間をとることで自分の中で知らないものではなくなる。

人は知らないものより、知っているものに親しみを持ちやすい。プラスの感情を持てば知れば知るほど好きになっていく。

好意的なものとして知る世界が多くなればなるほど、色々なものに親しみを持てるのではないか。好きが広がっていく世界が広がるのではないか。

こんな人にオススメ

気軽に読める紀行文なので、まずは樺太/サハリンに興味がある人にオススメしたい。これを読むことで今まで遠い場所だったサハリンが身近に感じられるようになるはずだ。

また、宮沢賢治について知りたい人もいいだろう。宮沢賢治が妹を亡くして、樺太/サハリンを旅しているときに作った詩をみながら土地の歴史をみていくことができる。

最後に紀行文を読みたい人だ。ビジネス書やノウハウ本と違って紀行文には独自の良さがある。また、難しい文字もなく厚い本でもないので、誰でも読みやすいだろう。実際に旅に行ってなくても旅に行った気分になれる。それが紀行文のよさだ。

リンク先

サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?