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新政No.6はどうやって醸されているのだろうか。

アルコール分:14度(原酒)
一瞬目を疑った。俄に信じられない数字だ。
 
和らぎ水を飲まないで日本酒を楽しみたい。ずっと思ってきた。酒と水を交互に飲むのが、飲み手にとって結構煩雑な作業。酒を飲んで「旨い」と感じた後に、あ、和らぎ水を飲まないと!という忌々しいストレス。そして水を飲むと、先ほど飲んだ酒の風味の余韻が消えてしまう。これが残念でならない。

 これを解消するには、「低アルコール日本酒」がいい。しかし、加水によってコクが弱くなる。そうなると、残った選択肢は「低アルコール原酒」。理想のアルコール度数はワイン並みの13%、ここまで落ちると水を飲む必要がなくなる。しかし、ここまでのスペックにはお目にかかったことがない。ワインと違って、日本酒の発酵プロセスでは、醪の中で糖分がどんどん造られていく。だから大半の原酒アルコール度は17~20%と、自ずとアタックの強いものになってしまう。

 日本酒を低アルコールで仕上げるには、醪タンクの中の発酵も、はたまた糖化も止めなければならない。言葉で言うのは簡単だけど、微生物のメカニズムをどのようにコントロールするのだろうか。並行複発酵は発酵と糖化が同時発生的に進行するカオスな世界なのだ。素人の僕には全く検討がつかない。そう考えると、糖を食い切る技術も大事だけど、アルコールを出さない技術というのは、むしろ神業レベルの域なのかもしれない。

 そこで、この「新政」。14%という度数は、ほぼ和らぎ水が不要。このストレスフリー感は何にも代えがたい。すいすいお酒が進む。デンプンを無駄に削らない効率的な扁平精米を採用している影響からか、55%という精米歩合でも雑味をほとんど感じない。

 どこまで行くのだろうか。「新政」に抱く何とも言えぬ浮遊感。6号酵母、生酛、扁平精米、樽貯蔵・・・ここまでトライ&エラーを繰り返している姿を見ていると、酒蔵というより、ラボラトリーの趣を感じる。自分の場合、美味しい酒を飲んだだけでは奮い立たないけど、失敗を恐れない挑戦的な蔵の醸した酒を飲むと、明日から頑張ろうという気概が生まれてくる。日本酒は特に、美味しさだけではなく、その蔵が持つ姿勢に思い巡らし飲むものだ。そんな意味では新政は自分にとってのパワードリンクなのだ。

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