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【SXLP6期レポート#トオク】企業スポーツ型クラブが、オーナー企業とともにクラブの未来を築くために

Sports X Initiative(以下、SXI)では、「システムデザイン思考(システムズエンジニアリング&デザイン思考)」をコアに据え、物事を多視点から捉え、自らが直面する課題や取り組んでいるプロジェクトに当事者意識をもち主体的にアクションを起こせるリーダーを育成するSports X Leaders Program(以下、SXLP)を運営しています。

過去のSXLP参加者たちがどのような問いを立て、システムデザイン思考を用いて議論やワークをし、最終的なアウトプットをしたのか、ぜひご覧ください。
※本原稿はSXLP6期終了時に執筆していただいた内容です。

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こんにちは。SXLP6期のチーム「トオク」です。

我々のグループでは、「企業スポーツ型クラブが、オーナー企業とともにクラブの未来を築くために」というテーマについて、23年10月から24年1月までの約4か月にわたりグループワークを行い、発表を行いました。本note記事ではその概要と、SXLPのプログラムのうち、特にPhase4 とよばれるグループワークの活動の様子と感じたことをご紹介したいと思います。

チーム「トオク」のメンバー

1.SXLP Phase4の内容について

SXLP6期のPhase4は、まず参加者の中で取り組みたいテーマを持っている人(テーマオーナー)がそれぞれに自らが取り組みたいと考えているテーマについて、ショートピッチを行うところから始まります。次に、そのテーマオーナーのもとに、「共感、賛同できる、一緒に取り組みたい」という参加者が集い、そこでグループが形成されます。

グループの形成後は、Phase1~3で学んだフレームワークやナレッジをフル活用して、オンライン/オフラインでディスカッション、ワークを進め、時に悩み、時に助け合い、(時に飲み食いをし、)課題解決のためのソリューションを考え、最終発表の場で講師陣・運営の皆さんやアルムナイ(卒業生)外部参加者の皆さんに対して提案を行います。これがPhase4の全体像です。

2.トオクのテーマ設定とその背景

我々のグループは、テーマオーナーとしてショートピッチを行なった参加者が3人いましたが、あえてそれらの最大公約数をとるとすると、「スポーツチーム、あるいはクラブが、ある大きな母体(以下、オーナー企業と呼称)の資金によって運営されている」という構造に存在する、その母体とスポーツチーム、クラブの関係性について、というものでした。

極端な話をすると「金なのか、金じゃないのか」—つまり、スポーツへの投資の目的、理由には何があるのか、それは財務的な価値なのか、それともスポーツに投資することでしか得られない価値なのか、という点が3人の当初の興味ポイントであり、そこに様々な立場でスポーツに関わる5名が集まり、グループが形成されました。

例えば、近年ではIT企業がスポーツクラブの経営に参入し、クラブの財務価値向上に取り組む例も見られます。

しかし、一方では、かつて実業団と呼ばれたような、いわゆる大企業の社員によって構成されたクラブを起点として、親会社、母体企業、責任企業とよばれるオーナー企業の資金に大きく依存する形で活動をしているクラブも依然として多く存在しています。

そういった一企業との密接度、依存性が高いという特徴を持つスポーツクラブが、オーナー企業にとってどんな価値を提供できているのか、あるいは提供する価値を高めるにはどうすればよいのか、という課題を解くことは、スポーツビジネスを考える上で重要ではないか、と考えました。

これまでの歴史において、母体企業、親会社と呼ばれるそのような企業の経営判断により、チームの存続自体が難しくなる、撤退を余儀なくされる、といった例があったことからも明らかなように、スポーツクラブの持続性という面で、一つの資金に依存することは大きなリスクを抱えていています。

しかし、一方で、安定した事業収益をもつ大きな母体が身近に存在し、かつ積極的な支援を引き出すことができれば、単年ごとにスポンサーシップ集めに奔走、苦労するようなスポーツクラブと比して中長期的な視点を持ちやすく、スポーツ振興や地域貢献などの観点での投資にもつなげやすい、という二面性があることから、このテーマに着目しました。

3.ワークと最終発表

長くなりましたが、これらの課題意識を持って、我々はとあるスポーツクラブとオーナー企業の事例を題材として、オーナー企業とクラブが一緒になって、クラブの、そしてスポーツのより良い未来を築くためにはどうあるべきか、というものを考える4か月を過ごしました。

その詳細は、ここに全てを公開することが叶わないのですが、最終発表では、ソリューションとして以下のようなものを発表しました。

それは、大企業ならではの、他事業部門というステークホルダーを巻き込み、スポーツクラブ運営部門との人材交流を通じて、スポーツクラブ部門のスタッフの意識を、過去の福利厚生を重視する内向きな思考から、オーナーの求める価値にコミットし、ビジネス価値を向上させる外向きの思考へ意識変容を起こす、というものです。

たとえば、親会社側の、スポーツに関わり経験を積みたいと考える若手社員や、経営やtoCビジネスに関する専門知識をスポーツクラブで活かしたいと考える人材と、クラブ側の、目先の運営に必死でなかなか新しい領域にチャレンジできない悩みを抱える人材がかかわることで、これまで見落としがちだった親会社の企業価値への貢献意識が高まったり、クラブの業務効率化、ガバナンス意識向上など、ビジネス価値の土台を強固にしなくてはならないという気づきが生まれる、などといった意識変容が期待されます。

これらの活動が十分に進むことは、企業スポーツ型クラブの強みである経済的な安定性や規模の大きさを活かして、スポーツの未来のための投資や活動に繋げられる、という点でも非常に高いポテンシャルを秘めていると考えました。

最終発表に至るまでは決して平坦な道ではなく、過程には様々な議論があり、良くも悪くも右往左往しながら作り上げたソリューションと言えると思います。

4.メンバーの感想、振り返り

以下は、トオクのメンバーによるワークの感想や振り返りです。
ちなみに、最終発表でもお伝えできなかったのですが、トオクというチーム名には、

  • ”遠く”に住んでいる8名が集まったり集まらなかったりして毎週ワークを進めたこと

  • 23年末、”遠く”から都内某所にて全員集合する奇跡を起こせたこと

  • つい”トーク”に夢中になってワークが疎かになったこと

ということを忘れない、という意味が込められています。笑

(藤原)
最初は大海原に投げ出されたような気持ちで、何をしていいかわからずとりあえず手を動かす、というところからでしたが、そんな我々でも運営スタッフやアルムナイ、講師陣からのレビューもあってなんとか最終発表までを乗り切ることができました。

特に最後の2,3週間は妥協したくないという一心で、時にはテーマ設定自体を疑ってみたり、フレームワークや用語自体の理解にも自信がなくなったりと、タフな課題を設定したことで大変なことも多かったですが、さまざまなバックボーンを持つ素晴らしいメンバーと共に、かなりしっかりと課題に取り組むことができたのがよかったです。SXLPの受講で得たいと思っていた知識や自信をつけることができました。

(鈴木)
素晴らしい仲間に出会えたことが一番の収穫です。夜遅く日付が変わるまで議論し続けたこと、リアルで集まれたこと、テーマとなったスポーツチームの試合観戦に行けたこと、忘れません。

特定の企業を題材にしたため詳細はここに書けませんが、資本力のある企業が日本のスポーツを支えてきたことは事実であり、今後もそれは変わらないと考えます。一方、企業からスポーツへの投資を現状維持ではなく拡大させていくためには、企業としてもステークホルダーへの説明責任から一定のロジックが必要になります。それが財務価値なのか非財務価値なのか、その企業のステータス等を踏まえつつ、誰にどうアプローチしたら投資の拡大を引き出せるのか、、、改めて壮大な(タックルしがいのある)テーマ設定だったと感じています。笑

(野副)
オーナー目線とクラブ目線の双方について考えるテーマ設定に興味を持ち、このグループに参加させて頂きました。様々なバックボーンを持つメンバーで構成されたグループでしたが、全員が共通してスポーツに対する熱量や課題感を持っていて、非常に活発な議論ができました。その反面、なかなか着地地点を見つけられずにいましたが、オーナーの皆さんが進むべき方向性を決めてからは、一気にワークを進めることができました。

苦労した面もありながらも最後まで走り抜けたときの達成感は、スポーツに似た感覚がありました。そして、その中でも藤原さんのようにリーダーシップをもってワークに取り組まれている様子や、それぞれの役割に徹するメンバーの皆さんを見ていて、私自身非常に刺激を受ける日々でした。SXLPを通じてシステム思考やプロセスフレームワークなどについてはもちろんですが、その他にもそもそもスポーツとは、リーダーシップとはなどなど、多くのことを考えさせられる機会となりました。

SXLP6期の皆さま、運営メンバーの皆さま、本当にありがとうございました。

(大塚)
私はスポーツクラブの中で働いたことはなく、外側でスポーツメディアやシステム提供という外側でクラブとの関わりを持って仕事をしてきました。クラブの中での課題はイメージしていたものよりも根深い部分がありつつも、皆さんとワークを進めながらDeep Diveしていくことで課題が本当はどこにあるんだっけをイタレーションを繰り返す中で洗練されて行った感覚がありました。

私自身これまでの仕事からこういった感覚を得ることはなかったので、実際の業務でも生かしていけるのではと思いつつ、このワークを通じて皆さんと戦友になれたのは財産になったと思います。6期の皆さん、また運営、アルムナイの皆さん含めて本当にありがとうございました。

(吉本)
Phase4が始まってもまだプロセスフレームワークを個人的に消化しきれていない中、藤原さんのリーダーシップをはじめトオクの皆さんと共に課題にタックルしていく過程でその理解度が高まっていく感覚がありました。
現状、今回私たちが設定した課題感を持つ企業も多く存在すると思いますが、この根深い課題に対して引き続き個人としてもアタックして行きたいと思っています。

そして何よりチームの皆さんの解像度と言語化能力の高さに毎度惚れながら、最後までやり切ることができたのは人生の宝物です。

末尾になりましたが、トオクチーム皆さん、講師・運営などで支えていただいたアルムナイの皆さん、改めて本当にありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。

5.読んでいただいた皆様へ

筆者自身は、SXLP第5期での参加も検討したのですが、様々な理由から一度見送り、今回第6期として活動に参加したという経緯があるのですが、改めて勇気を持って飛び込んでよかったなと感じています。

SXLPは、スポーツに関して、いま感じている課題を本気で解決したいとお考えの皆さまにお勧めできるプログラムです。ご興味がある方はぜひ、受講をご検討ください。

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