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新型コロナがあぶり出した日本の妊娠・出産・避妊・中絶問題(ニコニコ生放送)を見て

2020/05/07放送 新型コロナがあぶり出した日本の妊娠・出産・避妊・中絶問題(ニコニコ生放送)を視聴しました。

コロナの流行に伴って世界中で起きていると言われる影のパンデミック、女性への暴力、望まない妊娠、避妊のない性行為。メディアでも政治でもなかなか語られないことを専門家と共に考えます。
スピーカーはこんな感じ。
福島みずほさん(社民党党首・参議院議員)
早乙女智子さん(産婦人科医)
塚原久美さん(中絶問題研究者、中絶ケアカウンセラー)
福田和子さん(なんでないのプロジェクト代表)
MC:北原みのりさん(作家)
ここから見れるので、みんなにも見てほしいです。


ただ、いきなり100分の動画見るのってハードル高いよね。スピーカーを見るとすごくちゃんとしててなんか難しそう…
とりあえず見ろよというのは暴力的過ぎるかなと思うので、私なりに内容をまとめました。少しでも興味を持ってくれたら実際に放送を見てほしいです。

以下内容について。

女性として生まれると、自分の身体がまるで自分のものでないように感じる場面に直面することが多かった。
戦前ならば国のために、家のために"男の子を産めよ"と言われる。
人口が増えすぎたら"どんどん中絶してください"と言われる。
国家や家父長制に私たちの身体は支配されていて、それに抗議をしてきたのがフェミニズム、フェミニストです。
1994年カイロ会議(国際人口開発会議)
"私たちの身体は私たちの物であり、国はそのために努力しなければならない"
そこから四半世紀でなぜこんなに世界と日本で差ができたのだろう。
日本では不妊や妊娠(産むことにポジティブなこと)については少しずつ進んでいるが、産まない選択や性教育に関してはまだまだ進んでいないのではないでしょうか。

現在WHOがコロナ下において優先するべき必須の医療をまとめています。その中ではワクチン、救急医療、献血に並んで避妊や中絶、出産などを含むリプロダクティブヘルスも含まれている。これは権利なんだよ。
セクシャルリプロダクティブヘルス(SRHR;性と生殖に関する健康と権利)
あらゆる人間は生まれながらに自由であり、同等の尊厳と主権利を有する。
と書いてある。でもその後にもう一度女性と女児の人権は…と書いてあるの。これはね、それくらい女性の権利は守られにくいということを表していて、そして世界共通の問題であるということ。

最近ではコロナの影響もあって日本でも低用量ピルや緊急避妊薬がオンラインでアクセスできるようになりました。ただしWHOが出している"緊急避妊薬は性交の72時間以内に飲まなければ効果がないためオンラインのみならず薬局で入手されるべきだ"という声明に日本はまだこたえられていないのです。

日本の産婦人科の現在について。里帰り出産をしようとしても、帰省後2週間は外出ができないためその間に何かあったらどうしようと考え、里帰りせずに産むという手段を考えた妊婦は多い。でも、上の子は誰に任せたらいい?産後の手伝いは?これらの問題は女性が自分で何とかしろと任されがちですが、現実は難しいのではないでしょうか。
コロナで起こった問題を受けて、東京の産婦人科は他県に帰れなくなった妊婦を受け入れる病院をリストにしました。また、緊急避妊薬をオンライン処方できる病院もまとめています。このような動きが日本でも起こったことは(まだまだ望むことはたくさんあるけれど)、良かったと言えるでしょう。

コロナの状況下で女性と女児に対する暴力が増加することが流行初期の段階で言われていました。その中には性暴力も含まれます。
今回日本のNPOや政府はDVに対しての対策に素早く、そして積極的に動き出すことができました。理由はDV防止法があるため国としても動きやすいからだと考えられます。一方で避妊、妊娠、中絶に対しては全くケアできていません。それはこの問題をすくい上げるような法律がまだないからではないでしょうか。
コロナの流行を受けて世界の様々な国では中絶は不可欠なのかという議論が盛んに行われました。3/28にはアイルランドが世界で初めて中絶薬の遠隔処方を認可しました。4/1にイギリスは医師のオンラインでの指導下で自宅での中絶を認めました。ただしコロナの混乱が激化し、システムがうまく機能できていないという現実もありますがこれは大きな進歩です。
コロナの流行を受けて、世界のスタンダードな中絶の手段は中絶薬の服用になり、望まれた場合という限られた時にのみ吸引措置をとるという方向に向かっていくでしょう。中絶薬が他の中絶方法と比べてなぜ望ましいかについては後ほどお伝えします。

〇項目ごとに考える世界のいまと日本のいま〇
・ピルについて
①避妊、月経治療のために日常的に飲むピル
日本では1999年に認可されました。日本ではやっとオンラインで購入可能になったけど、世界の多数の国では薬局で簡単に購入できるんです。

②緊急避妊ピル(避妊失敗後72時間で飲むことで妊娠を防ぐ)
日本では緊急避妊ピルは病院でなければ処方されません。そして病院で緊急避妊ピルを処方してもらっても、医師に信用してもらえずその場で飲むことを要求される、緊急避妊ピルを処方しなければならなくなったことについて怒られるなど、嫌な思いをするケースが少なくありません。日本では価格も高く、ジェネリックが出て1万円前後。世界約90カ国では薬局で購入が可能で、それらの国で200,300~5000円程度で購入できるのに。医師の前で服用しなければ処方してもらえないのが転売を防ぐ目的だとしても、では困った人はそのまま困ったままでいいのでしょうか?どうして女性の困ったという声が信用されないのでしょうか?転売を防ぐ目的なら値段を下げればいいのではないですか?(こんなに価格が高い理由の一つに、日本では薬の認可が下りるまでに時間がかかりすぎるという問題が挙げられます。)
そうこうしているうちに海外では性交後120時間以内に服用すれば避妊が可能なピルもできています。3日(72時間)と5日(120時間)の違いは大きくないですか?
緊急避妊薬って、コンドームしてれば要らないだろという意見もあります。ちょっと待って。避妊の成功率は他の避妊具と比べてとても低いんだよ。実際にコンドームを使用した避妊の失敗による緊急避妊薬の購入が少なくないのです。

③中絶ピル(国によっては自宅で服用可能、薬によって流産を起こさせる薬)
中絶ピルは妊娠継続に必要なホルモン抑制する薬と、子宮を収縮させ外に排出させる薬の2種類の薬を組み合わせることによって中絶を行います。中絶ピルは日本では今やっと治験が終わったところでまだ使用はできません。しかしながら薬による中絶をWHOは今最も安全な中絶方法であるとしています。
中絶成功率は98%。これに失敗したら吸引処置をするというのが世界のスタンダードです。そして中絶ピルは去年WHOによる必須薬のコアリスト(特別な専門知識や医療の監視下でなくても服用できる薬)に移されました。上記で述べたイギリスが自宅においてピルによる中絶を認めた要因の一つには、このWHOの決定もあるのではないでしょうか。

・避妊について
日本では女性主体の避妊方法がほとんど認可されていないうえに高額です。
日本ではほとんどがコンドームによる避妊ですが、実際はコンドームは世界中で使用されている女性主体の避妊具に比べて成功率が低いのです。
つまり、避妊の最終決定権が男性にある上、成功率が低いということ。
”日本の女性は世界の女性に比べて緊急避妊が必要になる可能性にさらされている、それなのに非常に高額で処方箋もないのはどういうことなの?”

日本では女性主体の避妊、中絶が高額で、周りから受ける視線や心的負担においてもまるでペナルティのようです。そして男性主体の避妊の圧倒的な普及率、というか女性主体の避妊方法へのアクセスが悪すぎる(女性が自分で避妊の責任を持つことを妨げる)。これは性差別ともいえるのではないでしょうか。
日本では避妊も不妊治療も、分娩も、病気じゃないからという理由で保険適用ではありません。また、望まない妊娠に対して、女性は実は欲しかったんだと思い込んだりすることが少なくありません。夫婦間でも予定外の妊娠は起こり得り(予定外の妊娠をした人の2/3が避妊をしていたというデータもあります)、夫婦だからとして見過ごされることが多いですが、ここにおいての妊娠するかどうかも実は"自分で決めていいこと"なのです。

・中絶
日本では中絶において最悪の罰し方が起きているのではないでしょうか?
日本において中絶と言えばまだ手術しか手段がありません。
日本の1/3の医師が搔爬(そうは)単独(子宮の中を掻き出す)、1/2の医師が搔爬と吸引を組み合わせることで中絶しています。WHOは搔爬は安全な中絶ではないと位置付けているのに!!日本の残りの10%の医師は吸引単独の中絶法をとっています。(2010年のデータ)この吸引、WHOは吸引は安全な手段としていますが、実はこれは1970年代にプラスチック製のカニューレができたためにそれを使えば安全に行われるということです。でもね、日本で使用されているものはほとんどは金属製のカニューレなんです(WHOが安全と定めたときの条件を満たしていない!!)。2015年に日本でもプラスチック製カニューレがようやく認可されましたがとても高価です。
中絶については何か月から命なのかなど、中絶は是か非かという議論が主になってしまいがちですが、日本で行われている技術そのものがそもそも暴力なのではないでしょうか?

では、なぜ日本ではこんなに中絶について遅れているのでしょう?
・中絶のスティグマ(悪いものとする)化
堕胎罪によって堕胎は罪であると定められており、母体保護法によって一部の例を国が見逃してあげるという考えのもと日本で中絶は行われています。女性の健康と権利のために中絶するという発想がないのです。しかしながら堕胎罪はそもそも明治初期の女性が参政権もなかった時代に男性たちが作った法律であり、なぜそれが現在もまだ使用されているのでしょうか。
文化的にも、日本では中絶は子殺しと同じようにみられてきました。女性差別撤廃員会に日本が迫られたときに、胎児中心主義であり、堕胎罪は胎児の命を守るためにあると日本は答えています。(え、女性の身体と権利は優先されないの?)
水子供養(胎外に出ることができずに亡くなった子供を供養すること。檀家制度が崩れ始めたため寺社がお金を集めるために1970年代に新たに広めたもの)も中絶は悪いものとして女性たちに印象付ける手助けをしています。これが流行する前は女性たちにとって中絶が悪いことだという印象はなく、罪の意識を持たずに中絶を行っていました。
・法制度によって守られた医療界の既得権益
中絶は指定医師でないと行えないと母体保護法に定められています。業務独占が日本の法律で行われているのはこの法律だけなんです。医師会は民間団体なのに既得権を与えているのはおかしくないですか?他国では助産師も中絶薬の処方が可能な国がありますが、今後日本で中絶薬を認可しても医師による独占治療とされるおそれが十分あります。

日本において中絶に関してはフェミニストもなかなか言及してきませんでした。中絶を支援しようという発想も議論も日本ではまだ行われておりません。中絶や妊娠について世界ではこんなに日々進んでいるのに、日本では明治時代で止まったままなのかと現実を突き付けられます。
今回のコロナの流行でDV対策として給付金の問題など日本では驚くべき速さで動くことができました。でもDVと妊娠、出産はつながっています。法律では中絶は配偶者の許可がなければできません。これでは夫が避妊に協力してくれなくて妊娠してしまった場合、夫が同意してくれなければ中絶はできないのです。DV、虐待までは今回動くことができたましたが、その先の妊娠、中絶までは動くことも議論も未だできていません。
中絶は性差別と性暴力の問題と考えるべきだと提言します。妊娠し子供を産むのは女性であり、女性の健康と権利に投資しない国では少子化は止まらないのではないでしょうか。

・私が感じたこと
"他国と比較して年が過ぎるほどに日本はどんどん遅れていく。この現実を突きつけられると笑ってしまう、笑っちゃいけないんですけどね。""笑うしかないって気持ちになる、でも、笑った後に涙が出るんですいつも。"
そう言って笑う早乙女さんと北原さんを見て、私も涙が出てきました。

悔しさとか、怒りとか、悲しさとか、いろんな感情。事実として男性中心に築き上げられてきた社会で、人間として同じ立ち位置にいない気がするんだよね時々。そして私自身がそれに対して何の疑問も持たなかったことが怖いの。男性と女性の対立とかではなくて、男性も女性も生まれたときから接している社会の中で、疑問なんて抱かずにそういうものだと思ってしまう。私は最近自ら情報を取りに行っているけど、知識をつけるほどに苦しくなる。知らない方が楽しく過ごせるのかもしれない、自分を洗脳しながら、これが女の人生であり、その中で私は幸せなのよって思う方がずっと気楽だ。

大学生の頃の友達は、ある日妊娠した。大学3年生の夏休みだっけかな。夏休み前にはそろそろ彼と別れたいって言ってたっけ。妊娠が分かった時、子供ができたことに喜べたから私産むのと言った彼女は、有機化学の実習実験が必修であったため赤ちゃんに悪影響を及ぼすとしてひとり留年した。もし中絶が権利として広く日本で認められていたら、彼女は何を選んでいただろう。
国は女性の社会進出を推進すると言って、女性もいろんなキャリアプランや夢を描いていく現在で、中絶は権利として認められてもいいと思う。"成功率の高い避妊"を"女性が主体的に"できる環境を整えることも同時にね。男性は想像できるのかな。確実な避妊へのアクセスを妨げられ、予期せぬ妊娠をしてしまったときに、"胎児の命が優先だから夢もキャリアもあきらめろ"と国に言われる気持ち。他国の現在を知ってしまった私は26年生きてて初めて、日本において自分の人権が侵されているのではないかと怖くなった。
望まない妊娠が虐待や殺人、貧困に繋がってしまうことだってあるのに、この国はいったい誰を守っているのだろう。

私はこれまで気づかなかった、もしくは気づかないふりをしていた息苦しさに気づいてしまったから、苦しいのって叫んで少しでも社会が変わるきっかけになりたい。
そう思って番組の内容をまとめました。7割くらいはカバーできてるんじゃないかな。でも、これは私というフィルターを通してしまっているし、なにより何十年も前からこの息苦しさに気づいて最前線で戦ってきた先輩たちの怒りや、失望や、それでも社会を変えていこうとする力強さを感じてほしいので、この番組をぜひ自分の目で見て聴いて欲しいです。
そして一緒にお話ししましょう。

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